道路凍結と道路設置管理者の賠償責任(交通事故)

交通事故

1 道路凍結と損害賠償責任

道路が凍結して自動車事故が発生した場合、道路設置管理者の賠償責任が認められることもあります。

名古屋地裁平成30年3月6日判決は、賠償責任を否定した裁判例ではありますが、道路設置管理者の責任が認められうる条件を考える上で参考になるので、ご紹介します。

2 名古屋地裁平成30年3月6日判決の内容

同判決は、滋賀県の管理する国道を走行中のトレーラーが凍結路面で滑走し、多重事故を招いたという事故において、トレーラーを運行していた会社が道路の設置管理者である滋賀県に賠償責任を問うた事件での判決です。

同判決は、さまざまな凍結防止策について述べていますが、以下、重要な点について判決を引用します。

同判決は、道路の排水能力の不足があったのではないかとの指摘に関し、以下のとおり述べます。

「本件道路の横断勾配は、融雪を実施する道路の横断勾配の基準値である1・5パーセントを上回る2・0パーセントとされていること、滋賀県内の道路の排水設計を行うにあたり用いられる流達時間内の標準降雨強度は、本件措置による散水量よりはるかに多い1時間あたり90ミリメートルであることからすれば、原告らが主張する本件道路の状況を考慮しても、散水されたミ水は、横断勾配によって車道外へ排水された後、路外へ排水されると認められ、本件道路の排水能力も、散水された水を排水するに十分なものといえる」

「そうすると、本件装置が作動し続けたことで路面に水面が残ったとしても、それは本件装置の作動に伴って不可避的に生じるものであり、本件道路の排水能力の不足によるものではないから、排水能力の点で、本件道路が通常有すべき安全性を欠いているとはいえない」

その他、グルービング舗装に劣化がみられたとの主張については、耐用年数が経過していないことなどから、通常有すべき安全性がないとはいえないとしました。

また、ロードヒーティングを設置すべきとの主張については、予算の制約のある中で、当該現場にロードヒーティングを設置すべき事情はないとして、通常有すべき安全性がないとはいえないとしました。

以上のとおり、名古屋判決は、勾配、舗装の劣化など多様な要素を検討し、道路の設置管理者の責任の有無を判断し、最終的には賠償責任を認めませんでした。

特にロードヒーティングについては、予算の関係で設置しなくてもやむをえないとしました。

このように、道路の設置管理者の責任を問う場合には、予算の制約がある中でも可能性のある対策を取っていなかったかどうかが問われることに留意すべきでしょう。

3 道路管理の瑕疵を認めた裁判例

なお、名古屋地裁判決は道路管理の瑕疵を認めませんでしたが、道路凍結に関し道路管理の瑕疵、損害賠償責任を認めた裁判例も少なくありません。

例えば、岡山地裁平成22年10月19日判決は、凍結防止剤散布が不十分だったとして道路管理の瑕疵を認めました。

また、名古屋高裁金沢支部平成8年11月6日判決は、融雪装置からの水が凍結して発生した事故について道路管理の瑕疵を認めています。

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