家屋改造費等について(交通事故)

交通事故

1 交通事故と家屋改造費等

後遺障害と家屋改造費

交通事故で重い後遺障害が残った被害者については、自宅でそのまま生活することに支障があり改修が必要な場合、バリアフリー化などのための家屋改造費が賠償の対象となりえます。

家屋改造費の賠償を認めた事例

金沢地裁平成29年8月29日判決は、高次脳機能障害で1級に認定された被害者について、

・車いすで生活できるようにするために和室を洋室に改装する工事の費用

・2つ部屋を1つにする工事の費用

・スロープなど設置の外構工事費用

・トイレの改装費用

について賠償を認めています。

名古屋地裁平成29年12月19日判決は、両下肢に障害を残し,杖若しくは硬性装具なしには歩行が困難,膀胱機能はやっと自排尿ができる,常に残尿感があり,あるいはおむつが必要な失禁という状態で、5級の後遺障害の被害者について、

・水洗便器12万円,手洗いカウンター(手洗い,タオル掛け等)5万円,トイレの照明器具5000円

・庇(自宅外部のアルミ庇及び玄関横の小庇)(被害者は,自宅の玄関から駐車場まで車椅子ないし杖を用いて移動しているところ,雨が降っている場合,傘を差すことができないため,濡れてしまうことが認められるから,庇を設置する必要性が認められた)

の費用について賠償の対象としました。

 

このほか手すり等の賠償も認められやすいです。

 

 

家屋改造費の賠償を否定した事例

他方、山口地裁下関支部令和2年9月15日判決は、高次脳機能障害等で併合1級とされた被害者について、家屋改造費を否認しています。

被害者は、「本件事故による後遺障害(運動制限,記憶障害等による空間認識能力の低下)の影響で,入浴後に,本件事故前のように速やかに体の拭き上げを行うことができなくなった。その結果,体温管理のために,浴室にヒーターを入れる必要等が生じ,家屋改造を余儀なくされ,その費用として284万0240円を支出した。」として家屋改造費の賠償を請求しています。

しかし、裁判所は、家屋改造費は,受傷内容や後遣症の内容,程度等を具体的に検討した上で,家屋を改造する必要性が認められる場合には,その相当額が損害として認められる。そこで検討するに,医師の診断書等の医学的所見に基づく原告X1の主張する家屋改造の必要性を認めるに足りる的確な証拠はない。また,原告X1の本件事故による受傷内容や後遺症の内容,程度(前提事実(4),(6)及び(7))等を勘案しても,その必要性を認めることはできない。」としています。

家屋改造費が認められる場合、認められない場合についてのまとめ

歩行が困難になったこと、風呂やトイレで介助が必要になったことに基づき行う家屋改造費用については、定型的で、わかりやすいため、比較的認められやすいでしょう。

しかし、それ以外のものについては、医学的な必要性等について丁寧に主張立証をする必要があるでしょう。

また、そもそも被害者が自宅に帰ることが困難な場合には家屋改造費は認められないことになります(東京地裁平成28年8月17日判決)。。

2 3級以下の後遺障害と家屋改造費

1級、2級の後遺障害の場合には家屋改造費が賠償の対象として認められやすいですが、3級以下であっても認められることはありえます。

3級以下の場合、下肢欠損、下肢機能障害、脊髄損傷の後遺障害について家屋改造費が認められやすくなっています。

12級で家屋改造費を認めたものとしては京都地裁平成14年12月12日判決があります。

同判決は以下のとおり判断を示して家屋改造費分の賠償を認めました。

 

原告は,本件事故による後遺障害のため,自宅での家事,歩行に困難を来すようになり,家屋内の段差の解消,台所流し台の改造,廊下,浴室,トイレ等への手すりの設置等の改造を行い,その費用として313万1400円を支出したことが認められるところ,上記(5)ア記載の後遺障害の内容及び程度並びに症状固定当時の原告の年齢に照らし,上記の家屋改造は相当なものであったと認められるから,上記金額を本件事故と相当因果関係に立つ損害と認める。

 

3 より高い賃貸物件に引っ越した場合の賃料差額

賃借物件で暮らしていた被害者については、より高い賃料の住居に引っ越さざるを得なかったとして、賃料の差額分の賠償が認められる場合もあります。

例えば、東京地裁平成7年3月7日判決は、以下のように述べて、賃料差額の賠償を認めています。

 

原告は、前記の後遺障害が残ったため、従前居住していた家屋に居住することができなくなり、住居を移転したため、一か月あたりの家賃が従前に比較して五万八二三〇円増加したことが認められ、右家賃の差額につき本件事故と相当因果関係を有する損害としては五年分が相当である

 

4 家屋改造費が特定できない場合

今後住むであろう家屋が特定できないうな場合、家屋改造費の算定は困難です。

そのような場合は家屋改造が必要であることは慰藉料で考慮されることがありえます(東京地裁平成12年5月31日判決など)。

5 同居者の利益の考慮

いずれの場合についても、同居者も利益を得ているとして、費用の全額が賠償の対象とならない可能性があります。

例えば、東京地裁平成17年3月17日判決は以下のとおり判断を示しています。

浴室、洗面所、廊下等のバリアフリー化や居室の拡充はいずれも原告一郎だけでなく、同居する家族の生活の利便性を向上させるものでもあることも考慮すると、その約七〇%に当たる五一〇万円をもって本件事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。

また、大阪地裁令和2年3月31日判決は、以下のとおり、断熱窓について、設置費用が賠償の対象となりうることは認めつつ、同居家族の利益にもなるとして、50%についてのみ賠償の対象としました。

断熱窓については,証拠(原告X2本人)によると,これが原告X1の介護の要に供することは認められるが,他方で,これが原告X2及び原告X3ら家族の生活の利便性を高める点は否定することができないので,要した費用である10万円(甲36の1)の50%の範囲で認めるのが相当である。

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