執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 重度後遺障害と自動車改造費用の損害賠償請求
交通事故で後遺障害が残り、通常の自動車に乗車するのが困難となった場合、自動車改造費の賠償が認められることがありえます。
車いすで乗ることができるようにするための自動車改造費
例えば、交通事故の事例ではありませんが、大阪高裁平成29年12月15日判決は、両下肢機能全廃,両上肢機能障害及び神経因性膀胱直腸障害の後遺障害のある被害者について、以下のとおり述べ、自動車購入費・改造費として12,331,316円の賠償を認めています。
「被害者は、体温調節が出来なくなったため温度を一定にする必要があり、また、自ら排尿や排便を制御することが出来なくなったため、被害者が移動するには車いすのまま乗れる自動車が必要不可欠であった。」とし、自動車改造費として3,740,730円、その耐用年数を7年、症状固定時の平均余命年数60年に対応した8回買い替えの費用の賠償を認めました。
手動運転装置を装着する自動車の改造費
横浜地裁令和2年1月9日判決は完全対麻痺の被害者において足で自動車を運転できないとして、自動車の改造のための部品代、陸送費として28万円、平均余命に基づき81歳までの5年毎の買い替え費用の賠償を認めました。
また、大分地裁平成23年3月30日判決は、第7頚椎節以下完全四肢麻痺等の後遺障害が残った事例について、手動運転装置をつけるしかなくなったとして、自動車改造費56万2000円、将来の自動車改造費として41万7136円の賠償を認めました。同判決は、耐用年数6年として、推定余命まで8回の将来改造費を認めています。参照:手動運転装置費用の賠償を認めた判決
自動車の改造費と買換回数等
自動車の改造費の賠償が認められるとして、その買い替え費用については、5年、6年、7年間隔と、裁判例によって差があります。
統計などを用いてできるだけ短い期間の耐用年数を認めさせることが重要となります。
おおむね余命までの買い替えを認めているようですが、自ら運転する前提での買い替え費用については余命まで認めてよいかどうか争いが生ずる余地はあるでしょう。
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