建設機械の売買と即時取得

さいとうゆたか弁護士

1 建設機械売買と即時取得

建設機械は高額で取引されることが多いですが、所有権留保がなされたまま売買されることも多く、トラブルが発生し、裁判となる事例も少なくありません。

そのようなトラブルの際、買主側としては、即時取得により所有権を取得したと主張することがあります。

民法第百九十二条は、「取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。」と規定しています。

ですから、建設機械の売買において、「買主に、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないとき」には、仮に売主が所有権者でなかったとしても、買主は建設機械の所有権を取得することになります。

そこで、建設機械売買において、どのような場合に、「善意であり、かつ、過失がないとき」と言えるのか、問題となります。

以下、検討します。

2 建設機械売買と即時取得についての裁判例

仙台高裁令和2年8月6日判決は、建設機械の売買について即時取得が認められるか争われた事例について判断を示しています。

同判決は、「建設機械は、その価格が高額であって、その売買は所有権留保の割賦販売の方法によることが取引の通例であるため、占有者が当該機械の所有権を確定的に取得していないことが多いが、建設機械は自動車などと異なり、誰もが自由に買受をしようとするものではなく、これを入手しようとする者は転売目的の販売業者・ブローカー・自己使用目的の建設業者・担保目的の古物商・質商・金融業者などがその主な者である。そして、これらの者は、専門業者として、建設機械の売買は所有権留保の割賦販売方式によるのが通例であることを当然了知しているものといえるから、これらの者が製造業者や指定販売会社以外の者から建設機械を買い受けるにあたっては、当該建設機械の売主がその所有者であるか否かについて慎重に調査確認すべき義務を負うことは当然である」として、製造業者や指定販売業者以外の者から建設機械を購入する際には、買主は売主が建設機械の所有者であるかどうか慎重に調査すべきとしています。

その上で、当該事案では、

ⅰ 売主は、当初売買や約束されていた建設機械を引き渡せなくなり、別の建設機械をかわりにあてがっていること。売買対象の建設機械を交換するのに売買契約書を作り直してもいないこと

ⅱ 重機譲渡証明書の受領もない段階で代金が支払われていること

ⅲ 建設機械の取引ではリースや割賦販売が多いのに、ほぼ新品の建設機械について1億円近い代金で売買がなされていること

という事情があり、買主には重過失があり、即時取得は成立しないとしました。

このように、裁判所は、建設機械の即時取得を認めない傾向にあります。

建設機械の売買については慎重な調査が求められます。

3 建設機械売買のトラブルでお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)へ

新潟で建設機械売買のお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください。

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です