いじめなど学校事故と災害共済給付金

1 災害共済給付金とは?

独立行政法人日本スポーツ振興センター法15条1項7号は、独立行政法人日本スポーツ振興センターの業務として、「学校の管理下における児童生徒等の災害(負傷、疾病、障害又は死亡をいう。以下同じ。)につき、当該児童生徒等の保護者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第十六条に規定する保護者をいい、同条に規定する保護者のない場合における里親(児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号の規定により委託を受けた里親をいう。)その他の政令で定める者を含む。以下同じ。)又は当該児童生徒等のうち生徒若しくは学生が成年に達している場合にあっては当該生徒若しくは学生その他政令で定める者に対し、災害共済給付(医療費、障害見舞金又は死亡見舞金の支給をいう。以下同じ。)を行うこと。」をあげています。

この具体的内容については、独立行政法人日本スポーツ振興センター法施行令3条が定めています。

そのため、学校の管理下における児童生徒等の災害については、所定の給付がなされることになります。

2 いじめと災害共済給付金

施行令3条7項は、「センターは、高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。以下同じ。)、高等専門学校及び専修学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第百二十四条に規定する専修学校をいい、同法第百二十五条第一項に規定する高等課程に係るものに限る。以下同じ。)の災害共済給付については、災害共済給付契約に係る生徒又は学生が自己の故意の犯罪行為により、又は故意に、負傷し、疾病にかかり、又は死亡したときは、当該負傷、疾病若しくは死亡又は当該負傷をし、若しくは疾病にかかったことによる障害若しくは死亡に係る災害共済給付を行わない。ただし、当該生徒又は学生が、いじめ(いじめ防止対策推進法(平成二十五年法律第七十一号)第二条第一項に規定するいじめをいう。)、体罰(学校教育法第十一条ただし書(同法第百三十三条第一項において準用する場合を含む。)に規定する体罰をいう。)その他の当該生徒又は学生の責めに帰することができない事由により生じた強い心理的な負担により、故意に負傷し、疾病にかかり、又は死亡したときは、この限りでない。」と規定しています。

ですから、高校生については、原則自殺等については支給対象外とされることになります。

しかし、いじめと認められる場合には支給がなされることになります。

そのため、いじめがあったことを学校側に認めさせる上で災害共済給付金の支給を申請し、それが認められなかったら争うということもありえます。

例えば、福岡地裁令和3年11月25日判決は、原告がセンターによる不支給決定を争った結果、いじめによる自殺があったと認定されています。

同判決は、

・被災生徒の仲間が、被災生徒だけ除外して写真撮影をしていたこと

・被災生徒を除外した仲間で食事をしたこと

・口論において、仲間の1人から、良く思っていないことをつきつけられたこと

等をいじめとし、他に自殺の原因となるような事象が認められないとして、いじめ自殺を認め、災害共済給付金の支給を認めました。

災害共済給付金をめぐる争いでは、純粋にいじめや自殺等との因果関係のみが問題となり、学校にとっての予見可能性等は問題となりません。

いじめなどが否定され、災害共済給付金が支給されない場合、いじめなどを公的に認めさせるためにも、訴訟などをすることも選択肢となるでしょう。

3 災害共済給付金と損害賠償

災害共済給付金については、受給額については損害賠償額から控除されるのが原則です。

しかし、福岡高裁令和2年7月14日判決は、死亡による損害に関し死亡見舞金が払われたからといって、児童が生前に苦痛を受けたことについての慰謝料が填補されることにはならないとして、控除を否定しています。

いじめ自殺のケースでは、死亡見舞金は払われるものの、裁判では死亡についての損害賠償までは認められないことが多いので、注意が必要です。

4 新潟でいじめや学校事故のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)へ

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