分娩時異常出血・産科危機的出血と医療過誤

さいとうゆたか弁護士

1 分娩時異常出血・産科危機的出血

妊産婦約300人に1人くらいに、生命に関わる分娩後の大量出血が発生するとされています。
具体的には、出産にあたり、出血持続とバイタイルサイン異常(乏尿,末梢循環不全)、SI1・5以上、産科DICスコア8点以上、フィブリノゲン150mg/dl以下等となると、産科危機的出血と宣言されます。

SIはショックインデックスのことであり、心拍数/収縮期血圧です。

産科DICスコアは、基礎疾患(常位胎盤早期剥離、羊水塞栓症、DIC型後産期出血、子癇等)、臨床症状(急性腎不全、急性呼吸不全、臓器症状、出血症状、ショック)、検査項目からなるもので、DICとして治療を開始するためのスコアです。

産科危機的出血と宣言された場合、高次施設への搬送、輸血等の対応を取る必要があります。

また、産科危機的出血になる以前の段階でも、S1が1以上となった場合、分娩時異常出血として、高次施設への搬送考慮、輸血準備開始、血管確保、十分な輸液、血圧・心拍数・SpO2モニタリング、出血量・尿量チェック、Hb値・血小板数チェック、凝固検査の採血、出血原因の検索と除去、酸素投与、子宮腔内バルーンタンポナーデ、トラネキサム酸の投与等の対応をする必要があります。

医療機関がこのような対応を取らず、妊産婦に障害が残る等した場合、医療過誤として損害賠償の問題となる可能性があります。

2 分娩時異常出血・産科危機的出血と医療過誤

東京地裁令和2年1月30日判決は、産科危機的出血の状態となり、かつ、当該医療機関においては輸血等の措置をとることができなかったので高次医療機関に搬送すべきであったのに、それが遅延し、結果として妊産婦が死亡したとして、医療機関等に死亡についての損害賠償を命じています。

同事件では、出血持続とバイタルサイン異常(乏尿)があったと言えるかが問題となりました。

判決は、5時間程度出血が継続していたことや出血量から出血持続があった、2時間以上尿量が増加しなかったこと等から乏尿があったとして、産科危機的出血状態にあったと認定しています。

また、同事件では、妊産婦が羊水塞栓症になっており、そのため医療機関側は、そもそも救命困難だったと主張していましたが、裁判所は救命可能であったとして、医療過誤と死亡との因果関係を肯定しているところです。

産科危機的出血については基礎疾患を伴うことが多いため、因果関係が主要な争点となる場合が少なくありません。

3 新潟で医療過誤は弁護士齋藤裕へ

出産をめぐる医療過誤、その他の医療過誤でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。

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