産科医療補償制度 支給要件、補償金額、損害賠償との調整

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

産科、出産をめぐる医療過誤は新潟県弁護士会所属弁護士齋藤裕にお任せください

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目次

1 産科医療補償制度について

2 産科医療補償制度の要件

3 産科医療補償制度における補償金

4 産科医療補償制度と医療過誤による損害賠償金の関係

5 産科事故のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお問合せください

 

1 産科医療補償制度について

産科医療補償制度は、制度加入の分娩機関の医学的管理下に出生した子どもが、脳性まひとなり、一定の要件を満たした場合に、補償金の支払いがなされるという制度です。

出産で脳性まひが生じた場合に使用できる可能性があります。

2 産科医療補償制度の要件

産科医療補償制度の要件は、令和3年12月31日までに生まれた場合、令和4年1月1日以降に生まれた場合で要件が違います。

令和3年12月31日までに生まれた場合の産科医療補償制度の支給

ⅰとⅱのいずれも満たし、かつ、ⅲではない場合に支給されます。

ⅰ 出生体重1400g以上かつ在胎週数32週以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況で出生したこと

ⅱ 身体障碍者手帳1・2級相当の脳性まひであること

ⅲ 先天性や新生児期の要因によらない脳性まひである場合、または生後6ケ月未満で死亡した場合

令和4年1月1日以降出生した場合の産科医療補償制度の支給

ⅰとⅱのいずれも満たし、かつ、ⅲではない場合に支給されます。

ⅰ 在胎週数28週以上で出生したこと

ⅱ 身体障碍者手帳1・2級相当の脳性まひであること

ⅲ 先天性や新生児期の要因によらない脳性まひである場合、または生後6ケ月未満で死亡した場合

令和3年以前に出生した場合における産科医療補償制度における個別審査のあり方

以上のとおり、令和3年以前出生については、低酸素状況で出生したことが要件とされ、個別審査がなされます。

令和4年に基準が改定された理由について、公益財団法人日本医療機能評価機構産科医療補償制度の見直しに関する検討会「産科医療補償制度の見直しに関する報告書」は、「 これらの「分娩に関連する事象」は、妊娠・分娩経過において生じる脳性麻痺発症につながる事象であり、個別審査を満たす事案も満たさない事案も同様の経過をたどって脳性麻痺に至っていると考えられた。」としています。参照:産科医療補償制度についての報告書

つまり、個別審査の結果要件を満たした事案でも、そうでない事案でも、同様の経過で脳性麻痺に至っていると考えられたとしているのです。

このような知見がある以上、令和3年以前に出生した場合の個別審査については、事実上フリーパスに近い運用とする、理想的には令和4年以降の基準を遡及適用することが求められるといえます。

以上、日本医療機能評価機構のサイトをご参照ください。

産科医療特別給付事業による補償

上記のとおり、個別審査で救済されなかった方が救済されないことは医学的知見に照らし、極めて不公平です。

そのため、個別審査で救済されなかった方については産科医療特別給付事業による補償がなされる見通しです。

対象は、以下のとおりです。

ⅰ 出生年、在胎週数等

 ・2009~2014年出生

  在胎週数28週以上33週未満、あるいは在胎週数33週以上かつ2000g未満で出生した児

 ・2015年~2021年出生

  在胎週数28週以上32週未満、あるいは在胎週数32週以上かつ1400g未満で出生した児

ⅱ 脳性まひであること

ⅲ 先天的要因及び新生児期の要因によらない脳性まひであること

ⅳ 身体障害者程度等級1級または2級の脳性まひであること

申請期間は2025年1月から2029年末日です。

給付金額は1200万円です。

以上の内容が社会保障審議会医療保険部会において2024年10月31日に了承されました。

今後はパブコメを経て関係法令が公布等されることになります。

参照:社会保障審議会医療保険部会議事録

3 産科医療補償制度における補償金

一時金600万円、分割金2400万円、計3000万円が支払われることになります。

手続は、分娩機関に必要書類の取り付けを依頼し、それが来たら必要事項を記載するなどし、分娩機関に提出するというものです。その際には診断医の診断書の取り付けも必要です。

子どもの満1歳の誕生日から満5歳の誕生日まで申請可能です。診断可能な場合には満6か月でも申請可能です。

これらの手続きを弁護士に依頼することも可能です。ご依頼されたい方は、さいとうゆたか法律事務所にお問合せください。

4 産科医療補償制度と医療過誤による損害賠償金の関係

2のような要件となっていますので、産科医療補償制度では、医療機関側に過失がなくとも補償金の支払いがなされることになります。

しかし、産科事故で脳性麻痺が生じた場合、損害額が1億を超えることも稀ではありません。

ですから、医療過誤があった場合、産科医療補償制度による補償金とは別途、損害賠償請求をすることもできます。

その場合、損害賠償請求する額から産科医療補償制度による補償金を控除することになります(未履行分も含め、3000万円全額が控除されるとしたものとして、京都地裁令和3年3月26日判決があります)。参照:産科医療補償制度と損害賠償の関係についての裁判例

脳性まひのお子様を支えていくには現実問題として多額のお金がかかります。

医療過誤があったと言える場合には損害賠償請求も視野に入れるべきでしょう。

医療過誤により脳性まひがあったと考える場合、さいとうゆたか法律事務所にお問合せください。

5 産科事故のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお問合せください

低酸素性虚血性脳症と医療過誤

オキシトシン投与の医療過誤

もご参照ください。

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