執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 地方公務員の公務災害の争い方
地方公務員の公務災害については、まずは任命権者を経由し、地方公務員災害補償基金に認定請求と補償請求を行うことになります。
地方公務員の災害補償請求が認められなかった場合、地方公務員災害補償基金支部審査会への審査請求を行うことになります。
これは基金の決定を知った日の翌日から3か月以内に行わなければなりません。
審査請求をした日の翌日から3か月以内に審査請求の結果が出ない場合、審査請求の結果に不満がある場合、審査会への再審査請求の他、審査会決定等の取消しなどを求める行政訴訟を起こすことが考えられます。
審査会決定があった日の翌日から30日以内に再審査請求をする必要があります。
行政訴訟は支部審査会、審査会裁決の翌日の6ケ月以内にする必要があります。
2 国家公務員の公務災害の争い方
国家公務員の場合は人事院に審査を申し立てることができます。
国家公務員の公務災害については取消訴訟は起こせない
国家公務員の場合に注意すべきは、訴訟を起こす場合、取消訴訟ではなく、災害補償を求める訴訟を起こすことになるということです。
これは、国家公務員の災害補償請求権は行政処分により発生するのではなく、公務上の災害等の国家公務員災害補償法の定める災害補償の要件を満たすことで当然に発生すると解されているためです。
公務上の災害に当たらないとの認定も、審査申立を棄却する判定も、行政事件訴訟法3条2項にいう行政処分には当たらず、抗告訴訟の対象にはならないとされてきました(東京地裁平成17年9月26日・判例秘書L06033526、東京地裁昭和45年10月15日判決等。治癒認定通知が行政処分に該当しないとしたものとしては、東京高裁平成6年2月10日・労働判例672号92頁があります)。参照:公務上の災害に当たらないとの認定の処分性を否定した判決
国家公務員の公務災害については裁判で災害補償請求をすればよい
よって、国家公務員の災害補償がなされないことに納得がいかず裁判をする場合には、端的に、裁判において、公務上の災害等の国家公務員災害補償法が定める災害補償の要件を満たすことを主張し、同法に基づく災害補償請求をすれば足りることになります。
災害補償を受ける地位にあることの確認を求める訴訟も適法とされています(東京地裁平成25年5月16日・判例秘書l06830401)。
国家公務員の公務災害について地位確認請求をするという方法
地位確認請求については、大阪地裁平成20年6月25日(判例秘書L06351073)は、国家公務員災害補償法上の補償と福祉事業の給付請求と合わせその給付を受ける権利を有する地位にあることの確認を求めたことについて、確認を求める法律上の利益はないとしている。他方、福岡地裁昭和61年12月9日判決(労働判例490号36頁)は、「公務に起因する脳卒中に伴う権利を有する者であることを確認する」との確認請求について、「原告の場合、既に国家公務員を退職しているとはいえ、現に国家公務員共済組合法上の廃疾年金が公務によるものでないとされ、不利益を受けているほか、退職時までの定期昇給延伸、恩給、退職手当等における不利益、国家公務員災害補償法に基づく各種補償の面での不利益等を受けているのであるから、個々的に給付の訴えの途があるのはいうまでもないが、これらの不利益を除去する抜本的な手段として、右のような権利ないし地位の確認を求める利益があると認めるべく、右確認の訴えをなし得ると解するのが相当である」としているところです。これら2つの裁判例は矛盾した判断を示しているようではありますが、国家公務員災害補償法に関わる側面以外の多種多様な手続きとの関連で確認を求める利益があることを提示できたかどうかで差が出てきたと解釈することもできるでしょう。
公務災害について実施機関以外の者が実質的な判断をしている場合の対応
人事院規則16-0の20条は、「補償事務主任者は、その所管に属する職員について公務上の災害又は通勤による災害と認められる死傷病が発生した場合は、人事院が定める事項を記載した書面により、速やかに実施機関に報告しなければならない。負傷し、若しくは疾病にかかつた職員又は死亡した職員の遺族(以下「被災職員等」という。)からその災害が公務上のものである旨の申出があつた場合又は次条の規定による申出があつた場合も、同様とする。」と定めています。参照:人事院規則16-0
つまり、公務災害については、補償事務主任者は公務災害の実施機関に報告しなければなりません。
その上で実施機関において公務災害の認定を行うことになります(人事院規則16-0の6条)。
ところが、省庁によっては、実施機関に報告があげられず、補償事務主任者限りで実質的に公務災害に該当しないとの判断がなされることがあります。
このような扱いは違法ですし、国家賠償法上賠償の対象にもなりえます(熊本地裁令和5年2月7日判決)。
実施機関まで報告があげられないような場合には、上記裁判例を示すなどして、実施機関に報告をあげるよう交渉しましょう。
3 公務災害における公務遂行性
公務員が公務上傷害などを負った場合、公務災害として補償がなされる可能性があります。
地方公務員災害補償法1条は公務災害の補償を目的として規定しています。参照:公務災害について定める地方公務員災害補償法
公務災害として認められるためには、公務遂行性と公務起因性の2要件が必要となります。
この公務遂行性については、「任命権者の支配管理下にある状態において当該災害が発生した」ことが要件とされます。
この要件を満たすためには、休日の場合には、「特に勤務することを命ぜられた場合」であって、「その途上」において災害が発生したことが要件となります。
教員の児童宅訪問について公務遂行性を認めた東京高裁平成30年2月28日判決
この点、公務災害性が争われた最近の裁判例としては、東京高裁平成30年2月28日判決があります。
同判決は、小学校の教諭が、日曜日に実施された地域防災訓練に参加する経路の途上、担任する児童の生徒の家を訪問したところ、その家で飼い犬にかまれ、傷害を負ったという事案について、公務遂行性を認めました。
同判決は、まず、防災訓練への参加が、勤務を要しない日に特に勤務することを命じられた場合に該当するとしました。
その理由は、
ⅰ 防災訓練への参加については、教育委員会からの「訓練当日は、できるだけ多くの教職員が参加できるようにする。児童制度、保護者にも学校の立場から参加を呼びかける」との具体的な指導があったこと
ⅱ 小学校の職員会議において、本件防災訓練は学校をあげて取り組むべき行事として位置づけられており、現に職員会議において配布された「行司予定」には防災訓練への参加が明記されていたこと
ⅲ 本件防災訓練に参加した教員に対しては、正式に、教頭との書面(動静表)のやり取りを通じて、代休取得の措置まで講じられていたこと、
ⅳ 小学校の各教員は、防災訓練に参加した児童の人数などを教頭に報告することまで求められており、この報告を行うためにも本件防災訓練への参加を受け入れざるを得ない状況にあったことなどから、「特に勤務することを命ぜられた場合」に該当するとされました。
その上で、児童の家は自宅から防災訓練の会場に行くための通常一般に持ちいれられる経路であること、児童の家に行ったのも避難訓練への参加を呼びかける目的であったことなどから、訪問行為も「途上」において生じたものとされました。
以上より、公務災害としての認定がされています。
同事案では、原判決と結論が分かれており、限界事例としての参考価値があると思われます。
警官の外部団体研修の公務遂行性を認めた広島地裁福山支部令和4年7月13日判決
同判決は、警官の過労自殺に関する安全配慮義務違反が争われた事件についての判決ですが、同判決は、ロータリークラブ主催の海外研修への参加について、それに要した時間も含め、公務起因性を判断しています。
同判決は、
・これが次世代のリーダー等育成を目的としていたこと
・派遣先国での職業見学を含むものであること
・ロータリークラブが県警に参加要請をし、それを受け県警が被災公務員を候補者として推薦したこと
等の経過を踏まえて上記判断をしたものです。
山岳部顧問の合宿参加の公務遂行性を否定した千葉地裁平成23年6月28日判決
他方、千葉地裁平成23年6月28日判決は、山岳部顧問が合宿に参加したことが公務に該当しないとしました。
その理由は、
・被災労働者がこれに参加しようとしたのは平成15年3月29日及び30日の勤務を要しない日であること
・その場所も本来の勤務先である本件高校ではないからそれを公務というには旅行命令が発せられる必要があるというべきところ,本件合宿への参加については被災労働者に対して旅行命令が発令されていないこと
・本件合宿には山岳部員9名に対して3名の顧問が引率しており,場所もごく一般的なスキー場であったことからすると,人的体制は十分であったといえる上,被災労働者が合流しようとしたのは本件合宿の3日目になってからであり,日程の半分が経過した時点で更に引率者を増員しなければならない理由は見当たらず,他の参加者がバスで往復しているのを,夜行バスなどを利用せず,自ら自家用自動車を運転し夜を徹して走行して本件合宿先に到着しているところ,このような睡眠不足の状態で寒冷地でのスキー合宿の引率という体力を消耗する職務を行わせることは極めて不適切である。このようなことからして,客観的にみても,公務とはいいがたいこと
です。
このように、ある行為が公務に当たるかどうかは、その行為の性質(公務としての必要性等)だけではなく、公務としての手続きがとられているかも考慮されることがあります。
3 新潟で労災のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください
当職が担当したANAクラウンプラザホテル新潟過労労災事件についての記事
もご参照ください。
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