労災認定・公務災害認定について 新潟県の労災保険・公務災害は弁護士齋藤裕にご相談ください

交通事故

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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目次

1 労災保険の受給要件

2 労災保険の請求方法

3 労災保険の支給内容

4 身体的なケガのために精神的な疾患となった場合の取り扱い

5 労災と自賠責の関係

6 腰痛と労災

7 職場での暴行と労災

8 ドケルバン病・狭窄性腱鞘炎と労災

1 労災保険の受給要件

労働者の業務上の負傷・疾病・死亡等については、労働基準監督署に労災申請の上、労災保険を受給できる可能性があります。

労災保険に加入していない会社の労働者でも、労災保険の申請はできます。

労災保険が支給されるためには、業務等と負傷等との間に相当因果関係・業務起因性が必要です。

職場外の公園からサッカーボールが飛んできて、ケガをしたような場合には業務起因性が認められない可能性があります。参照:業務起因性を否定した裁判例

それ自体業務とは言えない懇親会に参加後の自動車の運転であっても、上司から言われ懇親会に参加せざるをえず、懇親会終了後に職場に戻る途中で懇親会参加者をアパートに送り届ける際の事故については業務上のものとされます。参照:懇親会終了後の自動車運転について業務性を認めた判例

また、もともとある病気に罹患している人が、業務のため通院などすることができず、病気が悪化したような場合でも、業務により治療機会が喪失したとして労災とされる可能性はあります。

2 労災保険の請求方法

労災であることに争いがない場合、会社の方で労災申請をすることが多いです。

しかし、過労死等、労災であること自体に争いがあり、会社が労災申請をしてくれない場合、労働者自身あるいは遺族が労災申請をする必要があります。

このような場合には業務起因性などを的確に記載し、裏付ける必要があります。

ですから弁護士に申請を依頼するとよいでしょう。

労災申請をする先は、事業場のある場所の労働基準監督署になります。

障害(補償)給付、遺族(補償)給付は5年、療養(補償)給付、休業(補償)給付、葬祭料(葬祭給付)、介護給付、二次健康診断等給付を受ける権利については2年の時効が定められていますので、速やかな申請をするのがよいです。

時効の起算点は通常は事故時、症状固定に関わる給付は症状固定時からとなりますが、業務上かどうか判然としないものについては業務上のものであると判断しうる基礎事実を認識したときからとされることがあります。

労災の不認定については審査請求、再審査請求をすることができます。それでも労災支給決定ができない場合、訴訟で争うことになります。

逆に使用者は労災支給決定に訴訟をすることはできません。参照:使用者が労災支給に不服申し立てできないとした判例

3 労災保険の支給内容

支給内容は、

症状固定前までは、治療費、休業補償、傷病年金等

症状固定後は、後遺障害の程度に応じた一時金・年金、介護関係の給付等

死亡した場合は、遺族年金・遺族一時金、葬祭費用等

となります。

休業補償は、労働することができない場合に支給されます。

4 身体的なケガのために精神的な疾患となった場合の取り扱い

大きな労災事故が発生した場合、その精神的ショックにより身体的な傷害・障害だけではなく、精神的な障害を発症することもありえます。

京都地裁平成26年7月3日判決は、ゴボウの袋詰めの機械の操作中に回転歯に挟まれ左示指切断の事故に遭った被災者が適応障害を発症したことについて、

・自らの指が機械の回転歯によって切断されるという体験は,激しい痛みを伴う衝撃的なものであることは容易に推察されるところであり,一生のうちに何度も体験する出来事ではないこと

・原告の左示指については,切断指再接着術によっても生着しせず,断端形成術によってその長さを約3cm短くしなければならなかったというのであり,その後遺症の程度は軽くはないこと

等を踏まえ、「本件事故の状況,本件左示指切断の程度,本件事故後の治療経過及び原告の症状経過,社会復帰の困難性並びに原告と同種の労働者の特質に鑑みれば,本件事故に係る心理的負荷の強度はこれを「強」と評価すべきであって,本件事故は,それ自体,原告と同種の労働者に対して,「主観的な苦悩と情緒障害の状態であり,通常社会的な機能と行為を妨げ,重大な生活の変化に対して,あるいはストレス性の多い生活上の出来事(重篤な身体の存在あるいはその可能性を含む。)の結果に対して順応が生ずる時期に発生する」適応障害を発症させるに足りる程度の心理的負荷をもたらすものであったというべきである。」としました。

このように、身体が損傷される労災に引き続き精神障害が発症し、労災として認定される場合もありますので、精神に異変を感じたら早期受診をする必要があります。

5 労災と自賠責の関係

通勤中や業務中の交通事故については労災保険が適用される可能性があります。

その場合、自賠責にも請求できるし、労災保険にも請求できることになります。

例えば、まず労災保険から支給を受け、それでも損害が填補されない部分を自賠責に請求するということも考えられます。

そのような場合、労災保険給付を行った範囲内で賠償金債権が国に移転します。

そうすると、被害者と国が自賠責に対して請求権を持つことになりますが、自賠責の支払いには限度があり、双方に満額支払うことができないということも起りえます。

そのような場合に、被害者と国の請求権をどう調整するか問題となります。

相手方が対人無制限の任意保険に入っており、被害者の過失割合が小さいときには、被害者は任意保険から賠償金の多くを受け取ることができるのであまり問題は顕在化しないと思われます。

しかし、相手方が対人無制限の任意保険に入っていないとき、被害者の過失割合が大きいときには、任意保険により損害額の多くについて填補を受けることが期待できないことがあり、そのようなときには自賠責に請求せざるを得ません。

よって、上記した被害者と国の請求権の調整の問題は重要な問題となります。

この点、最高裁平成30年9月27日判決は、以下のとおり述べて、この問題に解決を示しました。

「被害者が労災保険給付を受けてもなお填補されない損害について直接請求権を行使する場合は、他方で労災保険方12条の4、1項により国に移転した直接請求権が行使され、被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても、被害者は、国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である」参照:労災と自賠責の関係についての判例

つまり、被害者は、国に優先して、自賠責から全額の支払いを受けることができることになります。

労災保険の場合、休業補償の特別支給がなされ通常の損害賠償より有利な側面もあることなどのメリットがあります。

今回の判決により、労災保険から支給を受けた後に自賠責に請求した場合、国に優先して受給できることも明確化しましたので、労災保険が適用されるような交通事故については、労災保険申請をすることを原則とすべきことがはっきりしたと考えます。

業務や通勤中の交通事故による事故でも労災保険は支給されます。

その場合、被災労働者は自賠責の請求もなしえます。

被災労働者は、労災保険から受給し、それでも損害が填補されない場合、自賠責に請求し、自賠責の基準額まで賠償金を受け取ることができます。

6 腰痛と労災

目次

ボードハンマーを落下させて作業と腰痛労災

不自然な作業での腰痛労災

ボードハンマーを落下させて作業と腰痛労災

腰痛は比較的多く見られる労災です。

東京地裁平成25年1月16日判決は、労基署において腰痛を労災と認めなかったところ、腰痛を労災として認定しました。

いかなる場合に腰痛が労災として認められるかを考えるうえで参考になると思われるので、ご紹介します。

まず、判決は、腰痛が労災に該当するかどうかは、行政通達上の認定基準をもとに検討すべきものとします。

認定基準は以下のとおりです。

ア 腰痛認定基準
災害性によらない腰痛は,次の(ア)及び(イ)に類別することができる。
(ア) 腰部に過度の負担のかかる業務に比較的短期間(概ね3か月から数年以内をいう。)従事する労働者に発症した腰痛(以下「短期間の腰痛要件」という。)
ここに腰部に負担のかかる業務とは,次のような業務をいう。
a 概ね20kg以上の重量物及び軽重不同の物を繰り返し中腰で取り扱う業務
b 腰部にとって極めて不自然ないしは非生理的な姿勢で毎日数時間程度行う業務
c 長時間にわたって腰部の伸展を行うことのできない同一作業姿勢を持続して行う業務
d 腰部に著しく粗大な振動を受ける作業を継続して行う業務
(イ) 重量物を取り扱う業務又は腰部に過度の負担のかかる作業態様の業務に相当長期間(概ね10年以上をいう。)にわたって継続して従事する労働者に発症した慢性的な腰痛(以下「相当長期間の腰痛要件」という。)

その上で、判決は、以下のとおり述べ、被災者の腰痛が腰痛認定基準を満たすとします。

このようにみると,原告のタップ作業は,比較的短期間の腰痛要件aの「概ね20kg以上の重量物及び軽重不同の物を繰り返し中腰で取り扱う業務」に当たるというべきである(同要件では,重量について概ね20kg以上とされているが,これについては過度に形式的に考えることは相当ではなく,原告が5年間もの期間タップ作業等に従事し,腰部に負荷をかけ続けてきたことからすれば,同要件に該当するとみても支障はない。)。
また,原告は,前記1(2)に認定したとおり,把持しているタップの上に直接2.0トンのボードハンマーを落下させて,腰部を含む体全体に強い衝撃すなわち粗大な振動を受けることを繰り返したのであるから,原告のタップ作業は,短期間の腰痛要件dの「腰部に著しく粗大な振動を受ける作業を継続して行う業務」にも当たるものというべきである。

このように、中腰状態で繰り返しタップ作業を行っていたこと、2トンのボードハンマーを落下させて作業をしており腰部に強い衝撃を受けていたことを根拠に、腰痛認定基準を満たすものとし、被災者の腰痛を労災として認定しました。

不自然な作業での腰痛労災

また、名古屋地裁令和3年11月24日判決は、以下のとおり、労働者が不自然な姿勢での作業を余儀なくされたとして腰痛の業務起因性を認めました。

すなわち、同判決は、「原告が本件業務において本件クレーンに乗車し,右肘が約90度に曲がった状態で,低い位置に調整した操作レバーに手をかけて上半身をまっすぐに伸ばし,アクセルペダルを踏んだときの作業姿勢は,右臀部が運転シート座面から浮き上がり,右膝の角度は約90度となり,右足かかとを起点に右足の先端が外側に向く状態となること」等から、「極めて不自然ないしは非生理的な姿勢で毎日数時間程度行う業務」又は「長時間にわたって腰部の伸展を行うことのできない同一作業姿勢を持続して行う業務」に該当するとして、腰痛の業務起因性を認めています。

腰痛を発症するような業務は多種多様ですが、労災申請にあたっては上記のとおり腰痛認定基準を意識した主張立証が重要となります。

7 職場での暴行と労災

業務中に暴行を受けるなどし、傷害を負った場合でも労災として認定されることがあります。

例えば、大阪高裁平成24年12月25日判決は、以下のとおり述べて、同僚から女性労働者が殺害されたという事件について、業務起因性を認め、労災となるとしました。

労働者(被災者)が業務遂行中に,同僚あるいは部下からの暴行という災害により死傷した場合には,当該暴行が職場での業務遂行中に生じたものである限り,当該暴行は労働者(被災者)の業務に内在または随伴する危険が現実化したものと評価できるのが通常であるから,当該暴行が,労働者(被災者)との私的怨恨または労働者(被災者)による職務上の限度を超えた挑発的行為もしくは侮辱的行為によって生じたものであるなど,もはや労働者(被災者)の業務とは関連しない事由によって発生したものであると認められる場合を除いては,当該暴行は業務に内在または随伴する危険が現実化したものであるとして,業務起因性を認めるのが相当である。」
そして,その判断に当たっては,暴行が発生した経緯,労働者(被災者)と加害者との間の私的怨恨の有無,労働者(被災者)の職務の内容や性質(他人の反発や恨みを買いやすいものであるか否か。),暴行の原因となった業務上の事実と暴行との時間的・場所的関係などが考慮されるべきである。」

このように、職場で業務をしているときに暴行などにより死傷した場合には労災となるのが通常とした上で、労災との判断をするための判断要素を列挙しています。

結論的には、上記基準を当てはめ、当該労働者が殺されたことは労災に該当するとしています。

このように、業務中故意行為のため死傷した場合については、通常の過失行為とは異なる適用要件を満たす必要があるので注意が必要です。

8 ドケルバン病・狭窄性腱鞘炎と労災

 日本整形外科学会のサイトによると、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)とは、短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にある手背第一コンパートメントを通るところで生じる腱鞘炎です。

症状としては、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れる、母指を広げたり、動かしたりすると疼痛が走るとされます。

妊娠出産期や更年期の女性に生ずるものの、手の使い過ぎやスポーツや指をよく使う仕事の人にも多いとされます。

以上のように、手の使い過ぎでドケルバン病・狭窄性腱鞘炎になりますので、労災によるドケルバン病・狭窄性腱鞘炎もあります。

例えば、東京地裁昭和59年5月30日判決は、キーパンチャーの狭窄性腱鞘炎について、ボーリングが趣味だったものの、両手に症状が出ていることなどから労災と認めています。

現在の労災基準は、

1 上肢等に負担のかかる作業を主とする業務に(パソコンなどでキーボード入力する作業など)

2 相当期間(原則として6か月程度以上)従事した後に発症したものであること

3 発症前に過重な業務に従事したこと(ⅰないしⅲのいずれか)

ⅰ 同種の労働者よりも10パーセント以上業務量が多い日が3か月程度続いた

ⅱ 1日の業務量が通常より20%以上多い日が1か月に10日程度あり、それが3か月程度続いた

ⅲ 1日の労働時間の3分の1程度の時間に行う業務量が通常より20%以上多い日が、1か月に10日程度あり、それが3か月程度続いた

4 過重な業務への就労と発症まえの経過が医学上妥当なものと認められること

となっていますので、仕事上手をよく使う人がドケルバン病・狭窄性腱鞘炎となった場合に、これらの要件を満たせば、労災認定される可能性があります。

3については、長時間作業・連続作業、過度の緊張、他律的かつ過度な作業ペース、不適切な作業環境、過大な重量賦課、力の発揮も考慮されます。

これらの要件をすべては満たさない場合でも、取り消し訴訟等においてより柔軟に労災として認められる場合もあります。

9 新潟で労災のお悩みは弁護士齋藤裕へ

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