執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 ANAクラウンプラザホテル新潟労災事件について
本年5月20日、ANAクラウンプラザホテル新潟勤務の職員の労災決定が出されました。
昨日、記者会見もしました。
私がホテル側との交渉及び労災申請の代理人をしていましたので、経過などを報告します。
1 経歴・職種
被災された方は、長くホテルに勤務し、接客などの業務に従事していました。
2 所定外労働時間の経過
パソコンの記録からすると、被災された方は、以下のとおり、所定外労働をしていました。
2017年9月 103時間
2017年10月 181時間
2017年11月 119時間
ご本人の認識では発症前半年で130~300時間の残業、発症前1ケ月は250
~300時間の所定外労働をしていました。
これは厚生労働省の、心理的負荷による精神障害の認定基準の数値をはるかに上回るものでした。
長時間労働は2017年5月からです。そのときに業務担当が2名から実質1名に変更されました。
土日は朝8時30分ころから夜中まで仕事(午前3時30分に帰宅することも)をしており、休日もほぼありませんでした。
3 症状の経過
被災された方は、2018年1月、うつの診断を受けました(症状は2017年12月から)。
そのころから休職しています。
4 会社との交渉
2018年1月11日、私が代理人となり、会社に残業代など請求しました。
2018年3月30日、会社側代理人から文書が送付されました。そこでは、「管理職」なので残業代を払わないとの回答がなされました。
「管理職」だから残業代を払わなくて良いという法律はありませんし、極めて不合理な弁解でした(「管理監督者」について割増賃金の支給対象となしうるとの規定はありますが、これは「管理職」よりもかなり狭い範囲のものです)。
結局、2018年5月、会社側は未払い残業代のうち争いのない180万円の支払いをしました。
5 労災手続
2018年6月15日、私が代理人となり、新潟労基署に労災申請をしました。
2018年5月20日、新潟労基署で労災決定が出ました。
6 今後は、労基署に対してはまだ支給対象となっていない期間の休業補償の請求、ホテル側に対しては休業補償だけでは賄われない給料との差額分の請求等をしていくことになります。
働き方改革の必要性が言われるようになっていますが、未だに長時間労働が蔓延する職場は少なくなりません。
事業者にとってはあくまで労働者の健康確保が最重要課題となるべきです。
今回の件をきっかけに、ANAクラウンプラザホテル新潟、あるいは他のホテルにおける労働環境が改善されることを祈念してやみません。
2 新潟で労災のご相談は弁護士齋藤裕へ
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