執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 クリステレル胎児圧出法・子宮底圧迫法について
クリステレル胎児圧出法は子宮底圧迫法の代表的なものです。
子宮底圧迫法は、胎児を円滑に娩出させることを目的に、陣痛発作時に、掌や前腕などを用いて子宮底を圧迫するものです。
子宮底圧迫法については、
・吸引・鉗子分娩の適応があることを確認した上で実施すべきこと
・20分間で5回以内とし、娩出できない場合には速やかに他の急速娩出法に移行すべきこと
・娩出後は、母体の臓器損傷(肋骨骨折、内臓損傷、子宮破裂)の発生に注意して観察すべきこと
が指摘されています(綾部琢哉ら編集「標準産婦人科学」587頁)。
2 不適切な子宮底圧迫法・クリステレル胎児圧出法について義務違反と認定した裁判例
子宮底圧迫法・クリステレル胎児圧出法をめぐっては、不適切なやり方で胎児に障害が残ったり、死亡する事例もあり、多くの裁判例があります。
大阪地裁平成14年10月8日判決は、以下のとおり、2回を超えるクリステレル胎児圧出法を行い、結果として胎児が重篤な状態で出生し、最終的に死亡したという事案について、医療機関側の義務違反を認めています。参照:クリステレル胎児圧出法について義務違反を認めた判決
「医学上相当と認められる限度を大幅に超えてクリステレル圧出法を繰り返し,また,胎児仮死の疑いがあった時点で帝王切開の準備をすることを怠ったものであり,これらの事情によって,帝王切開の開始時刻が遅れたことは明らかである。すなわち,医師Eは,胎児仮死が疑われた段階で帝王切開の準備を行い,クリステレル圧出法を医学上相当と認められる回数(2回程度)施行しても胎児を娩出できなかった段階で,直ちに帝王切開に移行すべきであったのに,これらの注意義務に違反して帝王切開の開始の時点を遅らせたのであるから,同人には,本件医療契約上の注意義務に違反した過失があるといわなければならない。」
大阪地裁平成14年5月10日判決は、「吸引分娩中に胎児仮死の兆候である遅発性徐脈を含め徐脈が続いているが,D医師の証言によれば,D医師は分娩直前まで胎児仮死とは判断していなかったことが認められる。そうであるならば,D医師は,胎児仮死の有無について調査を尽くさず,吸引分娩の際に漫然とクリステレル圧出を併用した」として、胎児仮死の有無について調査を尽くさないまま吸引分娩の際にクリステレル胎児圧出法を併用したことについて注意義務違反を認めました。参照:クリステレル胎児圧出法併用について損害賠償を認めた判決
3 新潟で医療過誤は弁護士齋藤裕へ
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