執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 文部科学省の給食についての指導内容
うずら卵など丸い形状の食べ物については窒息等を生じさせないよう注意が必要
学校の給食中の事故で生徒が重大な障害を負ったり、亡くなったりする事案は少なくありません。
この点、文部科学省の「食に関する指導の手引-第二次改訂版-(平成31年3月)」232頁は、「水分が少ないものや思いがけず飲み込んでしまう可能性がある丸い形状のものは、咽頭部に詰まる危険性が高いため十分な注意が必要」としています。
うずら卵など、丸い形状の食物については、教諭などの注意が特に必要ということです。
給食時の誤嚥事故を防ぐためにとるべき対策
また、同文書は、
・食べ物は食べやすい大きさにして、よく噛んで食べるよう指導します。
・早食いは危険であることを指導します。
・給食の際は、学級担任等が注意深く児童生徒の様子を観察します。
・咀そ嚼しゃく及び嚥えん下げの能力には個人差があるので、個別の対応が必要な児童生徒については、全教職員の間で共通理解を図ります。
・特別な支援を要する児童生徒については、食事中に必ず教職員が付き添い、目を離さないようにします
としています。参照:学校側において給食時に指導すべき内容
学校側にはこれらの対応をすべき義務があり、これらの義務違反があった場合には、学校側は損害賠償義務を負う可能性があります。
以下、学校の給食中の事故と学校設置者の賠償責任について解説します。
裁判例においては、誤嚥等の危険性のある生徒については丸のみなどしないよう指導する義務、窒息が疑われる場合には適切に対処する義務などが学校側に認められています。
2 支援学校高等部での窒息死事故についての大分地裁令和6年3月1日判決
大分地裁令和6年3月1日判決は、知的障害・身体障害のあった、支援学校高等部の生徒が、給食中に食べ物を丸のみして窒息死したという事案について、学校側の賠償責任を認めました。参照:支援学校での窒息死事故についての裁判例
同判決は、生徒には食べ物を丸のみにする傾向があり、学校側もそれを認識していたとしました。
その上で、そのような生徒の「の傾向は、食事の際に食物を喉に詰まらせるなどして窒息等が発生する危険を伴うものと評価されるものであり、特別支援学校である本件支援学校の教職員においては、給食時における窒息等が重大事故につながる可能性があって、給食時において、当該児童生徒の有する特質に照らした配慮をすることが求められていたことも踏まえれば、前記の傾向を認識していた教員においては、本件事故発生時において、生徒の給食時間時、その動静を見守り、窒息等の危険性のある行動があった場合にそれを制止するなどして窒息等を防止すべき義務があったというべきである」としました。
そして、かかる義務が履行されなかったとして賠償が命じられました。
3 特別支援学校の中学生の誤嚥についての福岡地裁久留米支部平成30年8月10日判決
福岡地裁久留米支部平成30年8月10日判決は、特別支援学校に通う中学生が給食中の誤嚥で重大な障害を覆った事案について、学校側の事後対応について賠償責任を認めました。
同判決は、まず、「本件特別支援学校は,嚥下障害を患う生徒に対しても,日常的に給食介助を行うことが予定されているのであるから,給食介助者において,そのような生徒の生命や身体の安全に十分に配慮し,誤嚥窒息による窒息が疑われる事態が生じた場合,直ちに適切な救命処置を行うのみならず,直ちに応援を要請する義務を負うと解すべきである。」として、誤嚥が疑われる事態が発生した場合の救命のための義務を認めました。
その上で、教諭において、生徒が急に苦しい表情をしてペースト食をもどした後,苦しい表情を続けるのを認めたのであるから,これは,原告生徒の誤嚥窒息が疑われる事態であると考えるべきなのに、直ちに応援を要請する義務を果たさなかったとして義務違反を認めました。
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