共同親権法の解説 共同親権法案が衆議院通過間近!

さいとうゆたか弁護士

共同親権法案の衆議院通過が間近となり、改正法制定も時間の問題となりました。

改正法成立は、合理的理由のない親子断絶の解消、男女の平等な子育て負担の分担に向けて大きな一歩となると思います。

以下、簡単に、共同親権法の内容を解説します。

1 離婚時の共同親権

法改正により、協議により単独親権、共同親権を選択できるようになります。

裁判によっても単独親権、共同親権を選ぶことができるようになります。

その基準については、民法819条7項で、DVや虐待等があったような場合には単独親権にしなければならないとしています。

他方、DVや虐待等がなかった場合でも、裁判所に単独親権にする裁量があるようにも読めますが、民法819条7項でDVや虐待等が明示されている趣旨、民法819条8項でも暴力について明示している趣旨から、DVや虐待等がない場合について裁判所が広く単独親権とすることは許されないと解釈すべきでしょう。

ANJA STEINBACHの“Childrens and Parents Well-Being in Joint Physical Custody:A Literature Review ”は、40の研究成果をもとに、地理的近接性、葛藤無しに協力できる両親の能力(少なくともビジネスライクな関係を維持できること)、ある程度の父親の能力、家族生活に適合的な労働時間、ある程度の財政的独立、子どもが成熟したときに子どものニーズに合わせて協議内容を変更する意思が共同親権をうまく機能させるために有用な条件だとしています。

ですから、これらの要素が共同親権を認める上で考慮されるべきでしょう。

葛藤なしに協力できる両親の能力等については、片方の親が非協力的だと難しくなりますが、そのような非協力的な親は親権者とは認めがたいということになろうかと思います。

ことさらに子どもを従来の居住地から遠隔地に住まわせるような親についても同様かと思います。つまり、上記の共同親権にとって重要な要素を回避し、単独親権を目論むような親については、親権者としての適性がないと判断されるべきかと思います。

 

改正後の条文は以下のとおりです。

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。

 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。

7 裁判所は、第二項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。

  一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。

  二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。

2 単独親権から共同親権への変更

改正後の親権者変更の条文は以下のとおりです。

民法819条6項 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。

さらに、6項の親権者変更の基準として8項が新設されます。

8 第六項の場合において、家庭裁判所は、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする。この場合において、当該協議の経過を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無、家事事件手続法による調停の有無又は裁判外紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第一条に規定する裁判外紛争解決手続をいう。)の利用の有無、協議の結果についての公正証書の作成の有無その他の事情をも勘案するものとする。

このように、離婚時に単独親権となっていても、その後、共同親権に変更することはありえます。

しかし、この場合には、「子の利益のための必要」が要件となっており、DVの有無のみならず、協議経過や事情の変更が考慮されることになっています。ですから、調停等で慎重に親権を決めた場合については、親権者変更のハードルはそれなりに高いと考えられます。

ですから、現在、離婚が問題となっている場合、簡単に親権を決めるのではなく、離婚のタイミングなどをよく考える必要があります。

3 親権行使の方法

監護の方法については以下の規定が新設されます。

  (親権の行使方法等)

 第八百二十四条の二 親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。

  一 その一方のみが親権者であるとき。

  二 他の一方が親権を行うことができないとき。

  三 子の利益のため急迫の事情があるとき。

 2 父母は、その双方が親権者であるときであっても、前項本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。

 3 特定の事項に係る親権の行使(第一項ただし書又は前項の規定により父母の一方が単独で行うことができるものを除く。)について、父母間に協議が調わない場合であって、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができる。

 (監護者の権利義務)

 第八百二十四条の三 第七百六十六条(第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定により定められた子の監護をすべき者は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。この場合において、子の監護をすべき者は、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及びその制限をすることができる。

 2 前項の場合には、親権を行う者(子の監護をすべき者を除く。)は、子の監護をすべき者が同項後段の規定による行為をすることを妨げてはならない。

このように、824条の3により、監護者はかなり強大な権限を持ちますが、原則として監護者の指定はなされないと考えられます。

そして、監護者が指定されない限り、共同親権における親権行使は、日常的なものを除き、共同で行い、両親権者の意思が矛盾する場合には裁判所が決定することになります。

この点、進学先の決定、受診等も共同して決めないといけないと大変だとの声もあります。

しかし、急迫な受診は一方親権者が決めることができます。進学先は通常は子どもの意思により決めるでしょうし、急迫ではない受診等も医師の指示等から必要性が明らかな場合が多いでしょう。それにも関わらず一方親権者が合理的にはなすべき同意をしない場合、裁判所の判断により合理的な進学先決定や受診を命令することになるでしょうし、また、合理的な同意を拒否する親権者については親権を奪われる可能性があります。ですから、子の利益を害する事態はそう多くはないように思います。

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