執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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労働の内容は業務指示・業務命令により特定されます。
ですから、労働者が業務指示・業務命令に従わないことは、債務不履行となりえます。
しかし、だからといって業務指示・業務命令違反があったらただちに解雇しうるということではありません。
業務指示違反の程度・結果、繰り返しや従来の指導・監督・懲戒処分の経過などを総合して解雇の有効性が判断されることになります。
労働契約法16条により、解雇は客観的に合理的な理由があり、社会的に相当でないと無効だからです。参照:解雇の有効要件を定めた労働契約法
以下、裁判例を見ていきます。
1 マスク着用指示に従わなかった解雇を無効としたケース
大阪地裁令和4年12月5日判決は、マンションの管理人が、新型コロナ予防の観点からのマスク着用指示に違反したというケースで、解雇を無効としました。
同判決は、
・過去に同様の行為についての注意がなかったこと
・マンション住民からの苦情は1件でしかなかったこと
・マンション管理契約の解約には至っていないこと
・マスク未着用についての注意がなかったこと
・クラスターが発生したということはないこと
を踏まえ、規律違反には該当するものの、普通解雇は無効であるとしました。
2 警備員が指示された箇所を巡回しなかったこと等を理由とする解雇を有効としたケース
東京地裁令和5年1月25日判決は、警備員が、建物を巡回する際、鍵を金属で結束するようにとの指示、指示された場所(女子トイレ)を巡回するようにとの指示に違反したとしてなされた解雇を有効としました。
同判決は、
・これらは試用期間中の出来事であること、
・実地研修中に繰り返しされた指導役従業員からの業務上の指示に違反するというものであること、
・会社が指示違反について取引先からクレームを受けていること
等を踏まえ、解雇を有効としてます。
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