パーキンソン病の人が起こした交通事故と法的責任

さいとうゆたか弁護士

池袋の母子死亡事故に関して、事故を起こしたとされる人がパーキンソン病にり患していたと報道されています。

パーキンソン病については、難病情報センターのサイトで以下のとおり紹介されています。

「ふるえ(振戦)、筋強剛(筋固縮)、動作緩慢、姿勢保持障害が主な運動症状です。ふるえは静止時の振戦で、椅子に座って手を膝に置いている時や歩いているときに、手に起こります。動かすとふるえは小さくなります。筋強剛は自分ではあまり感じませんが、他人が手や足、頭部を動かすと感じる抵抗を指しています。動作緩慢は動きが遅くなることで、同時に細かい動作がしにくくなります。最初の一歩が踏み出しにくくなる「すくみ」が起こることもあります。姿勢保持障害はバランスが悪くなり転倒しやすくなることです。姿勢保持障害は病気が始まって数年してから起こります。最初から起こることは無く、病気が始まって2年以内に姿勢保持障害が起こるときには、進行性核上性麻痺などのパーキンソン症候群の可能性があります。運動症状のほかには、便秘や頻尿、発汗、易疲労性(疲れやすいこと)、嗅覚の低下、起立性低血圧(立ちくらみ)、気分が晴れない(うつ)、興味が薄れたり意欲が低下する(アパシー)などの症状も起こることがあり、非運動症状と呼んでいます。」

これを前提とした場合、ふるえや動作緩慢など、自動車運転に支障を生じかねない症状が見られることになります。

そうであれば、パーキンソン病であり、かつ、自動車運転に支障が生じかねない症状が出現しうることを認識しつつ、自動車を運転したとすると、民事刑事両面での法的責任を問われる可能性がありそうです。

この点、糖尿病にり患していた人が起こした交通事故に関する札幌地裁平成26年2月28日判決は、以下のとおり述べて、危険運転致死傷罪の成立を認めています。

「被告人は,平成25年7月19日午前10時20分頃,普通乗用自動車を運転し,札幌市中央区内の駐車場から発進進行しようとしたが,かねてから糖尿病にり患していて,前兆なく低血糖症状により意識障害に陥って,救急搬送されたことや交通事故を発生させたこともあり,前兆なく低血糖症状により意識障害に陥るおそれがあることを認識していた。
このような場合,自動車の運転者としては,自動車の運転を差し控えるべき自動車運転上の注意義務があるのに,被告人はこれを怠り,意識障害が起こらないものと軽信して運転を開始した。
このような過失ある行為により,被告人は,その頃,同所付近において低血糖症状による意識障害に陥り,低下した意識状態のまま自車を進行させ,同日午前10時58分頃,同区内の道路において時速約10キロメートルで進行中,進路前方の自転車走行指導帯で信号待ちのため停止中の被害者(当時60歳)運転の自転車後部に自車前部を衝突させ,同人を同自転車もろとも路上に転倒させた上自車でれき過して車底部に巻き込み,よって,同人に外傷性ショックの傷害を負わせ,同日午後1時9分頃,同区内の病院において,同人を上記傷害により死亡させた。」

病気による危険性を認識していた上で自動車の運転を開始した以上、その後不適切な運転操作が病気のため不可避だったとしても、運転を開始したことについて過失が認められますので、過失運転致死罪などが成立しうることになります。

池袋の母子死亡事故については、事故を起こしたとされる人がパーキンソン病の症状についてどのように認識していたかなどが今後問題とされることになるでしょう。

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