同意なく飲食店名公表可能との政府の通知について(新型コロナウイルス)

さいとうゆたか弁護士

政府は、令和2年7月28日、各都道府県等宛で、「新型コロナウイルス感染症が発生した場合における情報の公表について(補足)」を発出しました。

同通知では、
ⅰ 「基本方針においては、感染者に接触した可能性のある者を把握できていない場合に、感染者と接触した可能性のある者を把握するため及び感染症をまん延させないための適切な行動等を個人がとれるようにするため、『不特定多数と接する場所の名称』、『他者に感染させうる行動・接触の有無』等を公表すること等をお示ししているところ、当該公表については次のとおりの取り扱いであるので、御了知いただけますようにお願いします」
ⅱ 「当該公表は、場所の名称を公表する場合を含め、関係者の同意を必要とするものではないこと。なお、感染者等に対して不当な差別及び偏見が生じないように、個人情報の保護に留意する必要があること」
ⅲ 「感染の要因が、業種別で作成されているガイドラインに掲載されているような感染防止策を適切に講じていなかったことと考えられる場合には、不十分だった対応を具体的に公表することで、感染防止策の徹底につなげていくことができること」
としています。

 つまり、飲食店で新型コロナウイルス感染が発生し、そこで感染者に接触した人を特定できない場合には、同意なくその飲食店名を公表できる、ガイドライン違反がある場合にはその旨を公表できる、ということです。

 多くの都道府県の個人情報保護条例では、個人情報を、「個人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ない必要があると認められるとき」には、外部提供なしうるとしています。

 よって、飲食店名の公表が個人識別と結びつく場合であっても、「個人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ない必要があると認められるとき」には飲食店店の公表をなしうることになります。

 新型コロナウイルス感染症が発生し、かつ、接触者が特定できない場合、飲食店店の公表以外に接触者に感染の可能性を知らせることはできませんから、飲食店名の公表を行っても「個人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ない必要があると認められるとき」になされるものとして適法とされるものと考えます。

しかし、今回の通知が、特定の飲食店がガイドラインに違反していることを公表することを想定しているとすると、正当化されない可能性があります。

ガイドラインの有効性を示す目的があったとしても、例えばガイドラインを遵守している店としていない店での感染者発生状況を統計処理して公表するなど、他の方法もありうるため、個人識別と結びつく店名の公開が「個人の生命、身体又は財産の安全を守るため、緊急かつやむを得ない必要があると認められるとき」に該当するとは思われないからです。

ガイドラインはあくまで任意のものであるはずです。
それに違反したから見せしめ的に公表するというやり方には到底賛同できません。

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