日本郵便の非正規格差訴訟で扶養手当等を非正規社員に支給しないのは不合理との最高裁判決

さいとうゆたか弁護士

報道によると、最高裁は、日本郵便において、非正規従業員に扶養手当、年末年始勤務手当、夏季・冬季休暇、有給の病気休暇、年始期間の祝日休が支給等されないことについて、不合理な格差に該当するとの判断を言い渡しました。

原判決の一つである東京高裁平成30年12月13日判決は、夏季冬季休暇については、「夏期冬期休暇の趣旨は,内容の違いはあれ,一般的に広く採用されている制度を第1審被告においても採用したものと解される。したがって,第1審被告の従業員のうち正社員に対して上記の夏期冬期休暇を付与する一方で,時給制契約社員に対してこれを付与しないという労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものであるから,労契法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。」として、一般的に広く採用されている制度を導入したものについて正社員と非正規社員とを区別することは相当ではないとしていました。

また、同判決は、病気休暇について、「労働者の健康保持のため,私傷病により勤務できなくなった場合に,療養に専念させるための制度」ととらえた上で、「正社員に対し私傷病の場合は有給(一定期間を超える期間については,基本給の月額及び調整手当を半減して支給)とし,時給制契約社員に対し私傷病の場合も無給としている労働条件の相違は,不合理であると評価することができるものであるから,労契法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。」と判断していました。

非正規社員については療養に専念させる必要性がないとは言えないでしょうから、やはり病気休暇制度について正社員と非正規社員とを区別する合理性は乏しいと思われます。

東京高裁は、このように各手当の趣旨を把握した上で、その趣旨から各手当について正規社員と非正規社員の区別が許されないかどうかを判断し、非正規社員に各手当を支払わないことを不合理で違法だと判断していました。

最高裁がこの東京高裁判決等を維持したことの意味合いは大きいと言えます。

退職金やボーナスも含め、各手当の趣旨と勤務実態等からして非正規社員に手当を払わないことが正当化されない場合には非正規社員への手当不支給が違法となることが一層明確化されました。

今後は最高裁判決をもとに、非正規に対する差別を解消する動きを進展させるべきでしょう。

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