配偶者居住権と配偶者短期居住権 妻が夫の死後も家に住みづける権利について解説しました

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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目次

1 配偶者短期居住権

2 配偶者居住権

3 配偶者居住権と節税

4 新潟で相続のご相談は弁護士齋藤裕へ

 

1 配偶者短期居住権

相続法改正により配偶者居住権、配偶者短期居住権が創設されました。

これは、夫婦の一方が死亡した場合に、他方配偶者が従来の住居に居住する権利を認めることにより、その保護をはかるものです。

これには配偶者居住権と配偶者短期居住権の2種類あります。

ここでは配偶者短期居住権について説明します。

配偶者短期居住権が認められるための要件

配偶者短期居住権は民法1037条で認められることになります。

民法1037条は、「配偶者は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に無償で居住していた場合には、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める日までの間、その居住していた建物の所有権を相続又は遺贈により取得した者に対し、居住建物について無償で使用する権利を有する」と規定します。

つまり、配偶者短期居住権が認められるためには、ⅰ 配偶者が問題となる建物に被相続人死亡のときに住んでいたこと、ⅱ その建物が被相続人の財産であったこと、ⅲ 無償ですんでいたこと、という要件が必要となります。

このような要件があれば、遺言書に書いていなくても、相続人間の合意がなくとも、裁判所の審判がなくとも自動的配偶者短期居住権が認められることになります。

配偶者短期居住権の効果

そして、配偶者短期居住権の存続については、居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合には、遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日又は相続開始時から6ケ月を経過する日のいずれか遅い日までということになります。

つまり、最低限6ケ月は居住できますし、遺産分割がそれ以降になればそのときまで居住できることになります。

遺産の分割をすべき場合ではない場合には、建物所有権取得者から配偶者短期居住権の消滅申し入れがあった日から6ケ月経過した日までということになります。

ここでも、最低限6ケ月は居住できますし、遺贈などで建物を取得した人がいて、その人から配偶者短期居住権を消滅させる申し入れがあったときでも、そこから6ケ月経過した日までの居住は認められることになります。

なお、配偶者が相続開始のときに居住建物にかかる配偶居住権を取得した場合、相続人としての欠格事由に該当したり排除された場合には配偶者短期居住権は成立しないことになります。

2 配偶者居住権

配偶者居住権とは?

相続法改正によって配偶者短期居住権はもうけられましたが、基本的には遺産分割等までのものであり、暫定的なものです。

相続法改正では、これとは別に、より長期的な居住を認める配偶者居住権についての規定も設けられました。

配偶者居住権は、被相続人の財産に属した建物に相続開始のときに居住していた場合について、その建物の全部について使用及び収益する権利です。

残された配偶者が従来住んでいた建物を遺産分割などで取得すると、法定相続分などに従うとその他の預貯金などの遺産を取得できないという場合がありえます。

配偶者居住権は、配偶者が従来住んでいた建物への居住を認められつつ、その他の遺産についても相応に取得できるようにするために作られた権利です。

配偶者居住権の要件

これは、遺産分割により配偶者居住権を取得するものとされた場合、配偶者居住権が遺贈の目的とされたり死因贈与契約の目的とされた場合に認められます。

遺産分割については、協議・調停、審判によることがありえます。

審判によるには、

ⅰ 配偶者に配偶者居住権を取得させることについて相続人全員の合意がある場合、

ⅱ 配偶者が配偶者居住権の取得を希望しており、かつ、居住建物の所有者が受ける不利益の程度を考慮してもなお配偶者の生活を維持するために配偶者居住権を取得させるために特に必要があると認められる場合

のいずれかの要件を満たす必要があります。

かなり厳しい要件を満たさないと認められないことがわかります。

配偶者居住権の効果

配偶者居住権は、原則として、配偶者の終身継続することになります。

しかし、遺言、遺産分割の協議・調停・審判で存続期間を自由に定めることもできます。

配偶者居住権が認められると、その財産的価値に相当する金額を相続したものとして扱われます。

例えば、法定相続分に応じて遺産分割をすべき場合には、配偶者居住権の財産的価値分については既に配偶者が取得しているという前提で遺産分割がなされるべきことになります。

参照:配偶者居住権の税金との関係での評価

3 配偶者居住権と節税

配偶者居住権が設定された建物については、配偶者居住権の価格を引いた額で評価され、相続税の課税がされることになります。

国税庁のHPによると、所定の条件(2010年12月1日建築、配偶者の平均余命11・71年等の条件)下で、建物2000万円、土地5000万円の評価であるとき、居住建物は670万5217円、土地は3505万円と評価されるとしています。

ケースにより違いはあれど、配偶者居住権を設定することで住居の評価額を大きく引き下げることができ、節税効果が発揮させることができます。

そして、配偶者が死亡した場合、配偶者居住権はなくなりますので、配偶者死亡時において相続税との関係で格別のデメリットはないことになります。

相続税との関係も含め、遺産分割等にあたっては配偶者居住権について十分考慮する必要があります。

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