内定取り消しは自由にできない 新潟県の内定取り消しは弁護士齋藤裕にご相談ください

労災、解雇問題

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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目次

1 内定取り消しの法的効力

2 客観的に合理的な理由に基づき、社会通念上相当でなければ内定取り消しは違法

3 採用内定当時知ることができた事実に基づく内定取り消し

4 内定取消と慰謝料

5 新潟で労働問題は弁護士齋藤裕へ

 

1 内定取り消しの法的効力

内定取り消しは好き勝手にできるものではありません。

以下、その要件についてご説明します。

2 客観的に合理的な理由に基づき、社会通念上相当でなければ内定取り消しは違法

最高裁昭和55年5月30日判決は、採用の日、配置先、採用職種及び身分を具体的に明示した採用通知がなされ、その右採用通知のほかには労働契約締結のための特段の意思表示をすることが予定されていなかつたというケースにおいて、「(使用者)において採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であつて、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合」に内定取り消しをなしうるとしました。参照:内定取り消しについての判例

このように、採用内定により労働契約は成立し、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができる場合」でなければ解約はできません。

内定取り消しを有効とした裁判例としては、東京地裁令和4年9月21日判決があります。

同判決は、

ⅰ 先輩や上司を呼び捨てにしたこと

ⅱ 会社への入社理由について、ついでに受けただけである、たまたま採用までのスピードが早かった

ため、入社することにした旨の発言をしたこと(二次会。前記のとおり、同旨の発言を本件会食前にもしている。)、

ⅲ 同僚に対して、「やくざ」、「反社会的な人間に見えるな」と述べたこと

ⅳ 上司らが社内のルールを守ることの必要性等を説明したのに対し、労働者が、会社の方針が自分の考えと異なる場合、自分のやり方を通すのは当然であるという趣旨の発言をし、上司らが被告の方針を無視してまでも自分のやり方を貫き通すつもりかと質問したことに対しても「当たり前じゃないですか」と述べたこと

を踏まえ、「社内ルールやコンプライアンスを遵守する姿勢は、被告の従業員である以上、当然に必要な資質であるといえることに加え、本件支店は18名で構成される小規模な事業所であり、業務の正常な遂行のために従業員同士の協調性が求められること、特に営業職においては、社内外と円滑なコミュニケーションを図る協調性が重要かつ最低限必要な能力として求められる上、取引先との関係性を円滑にするために月に数回の会食の場に参加することがあることから、会食の場での社会人としての最低限のコミュニケーション能力、礼節が求められること、被告においては、上記資質等を原告が備えているものとの判断の下、本件採用内定をしたことがそれぞれ認められ、これらからすると、原告の前記言動は、これらの基本的な資質を原告が欠いていたことを示すものであって、かつ、被告はかかる資質の欠如を本件採用内定時には知り得なかったといえる」として、内定取り消しの効力を認めているところです。

3 採用内定当時知ることができた事実に基づく内定取り消し

最高裁判決でもい、内定取り消しができる事情については、(使用者)において採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実」でなければなりません。

この点、東京地裁令和1年8月7日判決は、以下のとおり述べて、内定前に実施可能だったバックグラウンド調査に基づく内定取り消しを無効としました。

「被告は,原告の採用に当たり,人材紹介会社においてすでにバックグラウンド調査が実施されたものと考えていたところ,原告に対する本件採用内定通知を発した後に,原告の業務能力や採用の当否について疑問が生じたことから,AやBにおける原告の勤務状況についてのバックグラウンド調査を実施し,その結果,後日判明した事情を本件内定取消の主たる理由として主張しているのであって,そもそも,本件採用内定通知を行う前に同調査を実施していれば容易に判明し得た事情に基づき本件内定取消を行ったものと評価されてもやむを得ないところである」

ですから、内定取り消しの効力を考える上では、その理由を会社としていつ知り得たかという点もポイントとなります。

4 内定取消と慰謝料

違法な内定取消がなされた場合、損害賠償の対象となることがあります。

例えば、東京地裁令和3年9月29日判決は、

1 「①原告ら(原告X1を除く)は内定段階ではあったものの,被告との間に解約権留保付き労働契約が成立していたこと,②同契約において,試用期間は3か月とされているものの,上記原告らは長年日本語を学び,日本における就労意欲は高かったものと考えられ,上記試用期間を超えて相当程度勤務したであろう蓋然性が認められること,③一般に,上記原告らのような留学生が日本において就職先を見つけるのは難しく,現に上記原告らの中には再就職先を見つけるのに1年半以上を要した者もいること等が認められ,これらの事情に鑑みれば,平成30年4月以降6か月分(同年9月末まで)を限度に,本件内定取消しと給与相当損害金との間の相当因果関係を認めるのが相当である。」として、6ケ月分の給与

2 「上記原告らは,日本に留学して長年にわたり日本語を学ぶとともに,××学園で専門知識を学び,一般に留学生が就職先を見つけるのが難しい中で,これらを生かすことのできる被告から本件内定を得て,日本での就労に大きな希望を抱いていたところ,入社の1か月前になって,被告から直接会っての説明も受けないまま,突然,本件内定取消しとなり,再就職先探しのほか,住まい,プライベート等に多大な不利益を受けたことが認められる。」、「他方で,前判示のとおり,被告は,上記原告らに直接会うなどして詳細な説明をするなどすることなく,上記原告らの多くと連絡すら取れていない中で,拙速に本件内定取消しを行い,その後も,××学園の担当者が上記原告らを集めて説明会を開くのであれば協力すると申し出ているにもかかわらず,××学園に積極的に協力を求めず,結局,上記原告らに対する説明会は開催されなかったなど,上記原告らの不利益に鑑みて,できる限りの誠実な対応をしたとはいい難い。」として、慰謝料30万円を認めました。

基本的には、通常の解雇と同じ枠組みで損害賠償が認められることになります。

5 新潟で労働問題は弁護士齋藤裕へ

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