リース契約、所有権留保がされているときに使用者が評価損の賠償請求ができるか?(交通事故)

執筆 新潟県弁護士会(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年日弁連副会長)

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1 評価損とリース契約、所有権留保

自動車が交通事故で損傷した場合、通常は修理代と事故当時の自動車の評価額の小さい方が損害額となります。

また、自動車が損傷した場合、その程度によっては中古車としての価格が下がることになります。

これを評価損といいますが、新車である、高級車である、損傷程度が大きいなどの事情があると、この評価損も賠償の対象となります。

問題は、自動車がリース物件や所有権留保のときです。

自動車の所有者がリース会社やクレジット会社である場合、使用者は修理代の請求はできるものの、評価損の請求はできないとする裁判例が多いのです。

この問題をどうクリアしていくか、裁判例から考えていきます。

2 車両使用者が評価損を請求しうる場合

自動車売買契約の約款上車両使用者が評価損を請求しうるとした裁判例

大阪地裁令和2年9月24日判決は、自動車の売買契約の約款上、車両使用者が評価損を請求しうるとしました。

自動車に係る売買契約書には,ⅰ 所有権留保期間中,使用者は善良な管理者の注意をもって原告車を使用保管しなければならないこと、ⅱ 使用者がⅰの義務を怠ったときは,当然に期限の利益を失い,残存債務及び遅延損害金を直ちに支払うこと、ⅲ 期限の利益喪失のときに使用者は所有者に自動車を引き渡すことになるところ、その際には一般財団法人日本自動車査定協会による査定評価額等を残存債務等に充当し,原告は充当後の不足額を支払うこととの記載がありました。また、一般財団法人日本自動車査定協会の査定では,基本骨格(フレーム)部位に修理歴のある車両には減価が発生することとされていました。

判決は、以上の事実関係を踏まえ、「原告車の所有権は,本件事故時点においてFに留保されていたものの,原告とFの売買契約上,原告車に基本骨格に係る評価損が生じた場合の同損害は,原告がその後に残債務を完済するか否かを問わず,原告が負担することになると認められる。そうすると,原告とFの間では,原告車に生じた評価損を原告に帰属させる黙示の合意があったものと認められるから,本件で原告車に基本骨格に係る評価損が発生した場合,その帰属主体は原告であると認められる。」として評価損について使用者が賠償請求しうるとしました。

しかし、約款をもとに使用者が評価損についての賠償請求をなしうるとの裁判例は少数にとどまっています。

債権譲渡と評価損についての賠償請求権の移転

東京地裁平成29年11月28日判決は、以下のとおり、リース契約の場合、評価損についての損害賠償請求をなしうるのはリース会社であることを前提としつつ、リース会社から使用者への損害賠償請求権の譲渡がなされていることを理由に、使用者からの評価損についての損害賠償請求を可能としました。

「本件事故当時,原告車の所有者はA株式会社であったが,原告会社は,A株式会社に対し,本件事故前である平成28年1月29日に車両入替えを理由としてリース契約の解約申入れをし,本件事故後である同年4月1日に同社から提示された中途解約金の全額(ただし,同年2月分までのリース料が支払済みであることを前提とした甲12記載の提示額から同年3月分のリース料を差し引いた978万4340円)を支払い,同年4月2日に同社から本件事故に基づく損害賠償請求権(原告車に関する物件損害)の一切の譲渡を受けていることが認められるから,本件事故により原告車に関して生じた損害賠償請求権は全て原告会社に帰属すると認められる。」

東京地裁令和4年1月25日判決も「原告は,令和2年1月31日,本件リース会社に対し,上記原告車の評価損相当分を含むものを,本件リース損害金として支払っていると認められるから,被告に対し,民法422条の類推適用により,本件リース会社に代位して,同評価損69万3644円及びこれに対する令和2年2月1日(原告から本件リース会社への本件リース損害金の支払日の翌日)から支払済みまで,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による金員の支払を求めることができるとするのが相当である。」として、車両使用車がリース会社等に評価損を含む損害を支払った場合に、車両使用者が加害者に評価損についての賠償請求をなしうるとしているところです。

当然、車両使用者からリース会社等への賠償がなくとも、評価損についての債権譲渡があれば、車両使用者は評価損について賠償請求をなしうることになります。

リース車両等について評価損の賠償請求しようとする場合、このような債権譲渡についての交渉も検討するとよいでしょう。

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