執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
今、婚前契約が話題になっています。
もちろん、結婚するときに夫婦が取り決めをするのは自由です。
財産以外の家事・育児等について取り決めをすることももちろん問題ありませんし、それが夫婦関係の円満につながる可能性もあるでしょう(ただし、それが常に法的効力を有するものではありません)。
ただし、財産に関する取り決めについては、夫婦財産契約という形で法律に従って締結しないと効力が認められない可能性があります。
民法第七百五十五条は、「夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。」としています。
つまり、結婚前に財産について契約をしないと、夫婦は双方の収入に応じて生活費を負担する義務を負うし(民法760条)、夫婦の一方が家事のために債務を負ったときに他方が返済する義務を負う場合があるし(民法761条)、夫婦のいずれかに属することが明らかでない財産については共有財産と推定され離婚時には通常半々の割合で分割される(民法762条2項)ということになります。
夫婦双方が経済的な独立性を維持したい場合、どちらかがかなり高収入であり原則折半の財産分与では問題が生ずる場合、どちらかの子どもが親の結婚相手に財産が移る可能性を心配して結婚に反対するような場合などには、結婚前に夫婦財産契約を締結する必要があるということになります。
この夫婦財産契約については、民法第七百五十六条で、「夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。」とされていますので、夫婦以外の人にも効力を主張したい場合には登記をする必要があります。
この夫婦財産契約については、民法第七百五十八条で、「夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。」とされており、結婚後の変更は原則としてできません。
割を請求することができる。
結婚時点では離婚まで視野に入れて契約をする気持ちになることはあまりないと思います。
しかし、代々の資産があるとか、結婚相手に財産が行くことを心配する人がいる等の事情がある場合には、積極的に夫婦財産契約締結をご検討されると良いと思います。
その際には、弁護士に作成を依頼し、後日不測の事態が生じないようにするのが良いと考えられます。
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