落雪事故と損害賠償責任・落雪防止のための措置請求権 

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 落雪事故と損害賠償責任

今回の寒波では屋根にたくさんの雪が積もっており、今後の寒波の緩みに伴い、落雪事故が発生する可能性があります。

落雪事故について損害賠償責任を認めた裁判例もありますので、屋根に雪が積もっている家の人は周囲に危害を与えないよう注意する必要があります。

以下、落雪事故をめぐる裁判例を見ていきます。

2 落雪事故と隣家の被害による損害賠償についての判決

東京地裁令和1年12月24日判決は、アパートの屋根に積もった雪が隣地との境にあるフェンスに落ち、フェンスを壊した事故についての判決です。

同判決は、アパートの屋根と隣地境界との距離が1・5メートル程度しなかったこと、2階の屋根から雪が落ちた場合には相当な衝撃があり人や物に被害が発生する危険性があったことなどを踏まえ、雪止めや雪下ろしなどの対応をすべきだった、しかしそのような対応がとられないまま落雪による被害が発生したので、損害賠償義務があるとしました。具体的には以下のとおりです。

「2階建てである本件アパートの屋根は,被控訴人の敷地に向かって24.227度(4寸5分)の角度で下っており,庇の先端と敷地境界との水平距離は約1.5メートルにすぎなかったから,本件アパートの屋根は,積もった雪が滑り落ちた場合に,その勢いで下り傾斜の方向に位置する被控訴人所有地に落雪する可能性が十分にある構造であると認められる。また,本件アパートが2階建てであって,屋根から雪が落ちた場合には相当程度の衝撃を伴い,そこに人がいたり,物があったりした場合には,それに落雪が衝突して被害が生じるということも十分に想定されるところである。控訴人は,このような本件アパートと被控訴人所有地との位置関係を前提として,屋根に雪止めを設置するか,そうでなければ,雪が降り積もった場合には雪下ろしを行う,あるいは,このような危険性があることを控訴人に伝え,駐車車両の位置を変えてもらうなど,落雪による被害の発生を防止するための措置をとるべきところ,何らの措置もとらなかったものである。」

ですから、屋根からの雪が隣地や人通りのあるところに落ちそうな家の人は、雪下ろしや雪止めの設置をすべきであり、それをせずに落雪による被害が発生した場合には賠償責任を負う可能性があることに注意が必要です。

3 落雪事故による人身被害についての損害賠償についての判決

札幌高裁昭和51年8月23日判決は、屋根の雪止めの鉄線が弱くなっていて、積雪のために切れ、そのため屋根の雪が屋根から落ち、歩道を歩行中の歩行者に落下し、歩行者が死亡したという事故について、工作物に瑕疵があったとして、建物の所有者・占有者の損害賠償責任を認めています。

このとき、現場である士別市では、118cmの積雪があったのですが、裁判所は、異常な積雪とは言えず、賠償責任は免れないとしました。

このように、屋根に当地で想定できる積雪量に耐えられない程度の雪の落下防止装置しかなかった場合、その結果生じた落雪による人身被害について、建物の占有者・所有者は損害賠償責任を負うことになります。

なお、同事故では、歩道上に雪堤がありました。

裁判所は、雪堤があったため、落雪被害に遭った歩行者の発見が遅れ、死亡に至ったとして、道路管理者にも損害賠償責任を認めています。

4 落雪事故を防止するための措置請求

なお、落雪事故が発生しないよう、隣家に屋根などの工事を請求しうる場合もあります。

東京地裁令和4年3月29日は、所有権に基づく妨害予防請求権として、落雪被害の高度の蓋然性がある場合には落雪防止措置を命ずることができるとします。

その上で、当該地域が豪雪地帯ではないこと、屋根に融雪設備があること等から高度の蓋然性を認めませんでした。

豪雪地帯において、隣家に屋根から雪が落ちるような位置関係・屋根の形状であり、落雪防止対策もなされていないような場合には、落雪防止措置を請求できる可能性はあると言えるでしょう。

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