マンションで迷惑行為をする人に対してどのように対応すべきか?

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

新潟県弁護士会の弁護士齋藤裕にご相談ください

新潟でマンション管理のお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください。

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

目次

1 マンションにおける迷惑行為の停止等請求

2 マンションの使用禁止の請求

3 マンションの競売の請求

4 マンションでの民泊をやめさせるために

5 新潟でマンション管理のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください

マンションに関わる法律である区分所有法は、マンションの住人が迷惑行為をした場合の対応について定めています。

以下、どのような方策があるのか、ご説明します。

1 マンションにおける迷惑行為の停止等請求

迷惑行為を止めさせる法律上の根拠

区分所有法57条は、1項で「区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる」、2項で、「前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない」と規定しています。

区分所有法第6条1項は、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」としています。

参照:区分所有法

「共同の利益に反する行為」とは何か?

上記のとおり、共同の利益に反する行為の停止等の請求をなすためには、「共同の利益に反する行為」の存在は不可欠です。

この「共同の利益に反する行為」としては、ⅰ 建物の不当棄損行為、ⅱ 不当使用行為、ⅲ プライバシーの侵害ないしニューサンス、ⅳ 不当外観変更があげられる。このうち、ニューサンスとしては、「その専有部分内で他人に迷惑を及ぼすような異常な騒音・振動・悪臭・有毒ガスなどを発散させる場合とか、他人に迷惑を及ぼすような家畜その他の動物を飼育する場合とか、あるいは自分の専有部分で他人に迷惑を及ぼすような営業(例えば24時間営業のスナック喫茶など)を開業するとかの場合」があげられます(法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」271頁以下)。

名誉毀損行為の差し止めについての裁判例

マンション住人による管理組合役員等に対する名誉毀損について差し止め請求ができるかどうかについては、最高裁平成24年1月17日判決が判断を示しています。

同判決は、「マンションの区分所有者が,業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し,マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は,それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので,それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には,法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地があるというべきである。」としています。参照:マンションにおける名誉毀損の差し止めについての判例

つまり、単に役員個人に対する名誉毀損に該当するだけでは差し止めは認められず、管理組合の運営等に支障を生ずる場合に初めて差し止めが認められうることになります。

東京地裁令和5年5月25日判決は、この判例に従い、名誉毀損についての差し止めを認めています。

同判決では、全戸に、支出の適正性を問題視し、役員による議事録改ざん・総会中止による隠ぺい・個人的な理由による管理費の目的外使用等を記載したビラを配布したという事案で、差し止めを認めています。

裁判所は、管理組合として、文書配布行為をやめるよう求めるため監視カメラを時間程度確認して配布者を特定する必要があったこと、議事録の改ざんがないことを明らかにするために長時間の録音反訳作業をしなければならなかったこと、住人の不安や疑問を解消するために臨時の管理組合ニュースやサッシなどを作成し周知しなければならなかったとして、管理組合の業務への支障を認めました。

差し止めが認められるかどうかについては、名誉毀損の範囲、管理組合が名誉毀損に対応して行う事務の内容などを踏まえて判断されるということになるでしょう。

違法民泊の差し止めについての裁判例

裁判例として、違法民泊の差止を認めた東京地裁平成31年2月26日判決があります。

同判決は、「区分所有法6条にいう「区分所有者の共同の利益に反する行為」と認められるかどうかは,当該行為の性質,必要性の程度,これによって他の区分所有者が被る不利益の態様,程度等の諸事情を比較考量して決するのが相当である。」として基準を述べます。

その上で、

・マンションでの民泊について必要な許可がされていないこと
・無許可営業は,旅館業を知事の許可にかからしめて,旅館業の業務の適正な運営を確保することにより,もって公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することとした旅館業法の趣旨,目的を没却するものであり,本件民泊営業は,違法な行為である

・被告が本件建物で本件民泊営業を行っているために,本件マンションの他の住民が,エレベータや郵便受けの利用に支障を生じていること

・本件訪問者らはいずれも被告の立会いのないまま外側オートロックドア及び内側オートロックドアを開扉しているため,被告の本件民泊営業のために,本件マンションの防犯設備の一部が無力化されていること

から、「被告が本件建物で本件民泊営業を行うことは,他の区分所有者の共同の利益に反する行為であると認められるから,本件マンションの他の区分所有者の全員は,被告に対し,本件民泊営業をしないように求めることができる」との判断を示しています。

グループホームとしての利用の差し止めについての裁判例

また、大阪地裁令和4年1月20日判決は、管理規約で住戸をグループホームとして使用することが禁止されていたところ、住戸をグループホームとして使用することにより、管理組合がマンションについて防火対象物点検義務を負うことになること(費用は1年あたり51万8400円)、グループホームに供されている住戸への自動火災報知設備の設置義務を負うことになることなどから、管理組合の経済的負担が増す可能性があるとして、グループホーム設置は共同の利益に反する行為に該当し、管理組合は住戸のグループホームとしての利用停止を求めることができるとしました。

管理費の滞納と差し止めについての裁判例

大阪高裁平成14年5月16日判決は、管理費を滞納した場合について、利用の差し止めをしたから管理費を払うようになるという関係にはない等として、差し止めを認めませんでした。参照:管理費滞納と使用差し止めについての裁判例

2 マンションの使用禁止の請求

区分所有法58条は以下のとおり定めます。

(使用禁止の請求)

第五十八条 前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。

 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。

 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。

 前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。「第6条第1項に規定する行為」について

「第6条第1項に規定する行為」とは、「共同の利益に反する行為」のことです。

「共同生活上の障害が著し」いと言える例としては、「イ 一度ガス爆発事故を発生させ、再度そのおそれが強い場合、ロ 専有部分を売春行為、とばくの開帳など犯罪行為や著しい公序良俗違反の行為に使用している場合、ハ 騒音、悪臭を発するなど他の区分所有者に著しく迷惑を及ぼす営業行為を行い、再三の警告にもかかわらず、違反行為を停止しない場合、ニ 性格異常者が他の区分所有者に刃物をつきつける等、他人に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある行為をする場合、ホ 暴力団構成員が専有部分をその事務所として使用し、他の区分所有者に恐怖を与える等の顕著な振舞いがある場合、ヘ 駐車中の車のタイヤの空気を抜く等他の区分所有者の使用等に対して悪質な妨害行為を繰り返す場合」があげられています(法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」307頁以下)。

「前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」も要件です。

この点、「前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」が要件とされているため、「差止訴訟を提起したがその裁判に従わない場合にはじめて使用禁止の請求が問題とな」るとされています(法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」306頁以下)。

「弁明する機会」については、横浜弁護士会編「マンション・団地の法律実務」298頁は、「弁明の機会を与えたと言えるためには、あらかじめ本条の要件該当事実(上記実体的要件)の概要を知らせる必要がある」としています。

3 マンションの競売の請求

区分所有法59条は競売について定めています。

 (区分所有権の競売の請求)

第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。

「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」とされており、使用禁止請求でも対応できない場合に要件を満たすことになります。

この要件を認めて競売請求を認容した事例としては、マンションを暴力団の事務所として使用していたことについて、その他の方法では障害が除去できないとして競売を認めた福岡地裁平成24年2月9日判決があります。参照:マンションの区分所有権の競売を認めた裁判例

その他の要件については使用禁止請求の項をご参照ください。

4   マンションでの民泊をやめさせる方法

 東京地裁平成30年8月9日判決は、マンションでの民泊について以下のような判断を示しています。

「改正後の本件規約32条1項は,「区分所有者は,その専有部分を専ら住宅あるいは事務所として使用するものとし,他の用途(不特定の者を対象としてその専有部分を宿泊や滞在の用に供することを含む。)に供してはならない」と定め,37条の2第1項は,「区分所有者は,その専有部分を第三者に貸与する場合には,期間を1か月以上とし(いわゆるウィークリーマンション等の短期間の貸与をしてはならない。)」と定める。」
「被告は,平成28年5月以降,○○○号室において不特定の者を対象としてその占有部分を宿泊や滞在の用に供し,又は短期間の貸与をしていたと認められ,被告の行為は,本件規約32条1項及び新設された37条の2第1項に反するものであったといえる。」
「被告は,今後とも,本件規約32条1項,37条の2第1項に反して,不特定多数の者に対し○○○号室を短期間の宿泊や滞在の用に供する可能性が高い。」
「以上によれば,被告は,本件規約32条,37条の2第1項に反して今後とも民泊行為をするおそれが高く,民泊行為を差し止める必要性が認められる。」

このように、判決は、専有部分を宿泊の用に供してはならないという文言が規約にあることを前提に、今後も民泊営業がなされる可能性が高いとして、民泊営業の差し止めを認めました。

5 新潟でマンション管理のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください

新潟でマンション管理のお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください。

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です