写真と著作権

さいとうゆたか弁護士

1 写真と著作権

写真は対象物をありのままに写し取るという性質を持っています。

他方、現在では写真も芸術となりうる場合があることは一般的に認識されているところです。

そのため、写真の中にも著作権の対象となるものがありますが、すべての写真が著作権の対象となるわけではありません。

以下、写真の著作物性について解説します。

2 著作権法の定義と著作物に該当する写真

著作権法は、著作権や著作者人格権による保護の対象となる著作物について、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義しています(2条)。

よって、「思想又は感情を創作的に表現した」と言える写真が著作物となりますが、どのような写真がこの要件を満たすでしょうか?

 写真を著作物性と認めた裁判例

東京地裁令和3年3月26日判決は、スマホにより撮影され、インスタグラムに投稿された写真について「本件写真は,原告自身及び上記洋服が際立って見えるよう工夫され,構図,カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉等において原告の思想等を創作的に表現したものであると認められるから,著作物に該当」するとしています。

大阪地裁令和3年1月14日判決は、以下のとおり、被写体に化粧・表情・ポーズ等により人為を加え工夫をしていること、撮影の方向や角度等について工夫をしていること等から、写真に著作物性を認めています。

東京地裁令和2年12月23日判決は、「原告が撮影時期及び時間帯,撮影時の天候,撮影場所等の条件を選択し,被写体の選択及び配置,構図並びに撮影方法を工夫し,シャッターチャンスを捉えて撮影したものであるから,原告の個性が表現されたものということができる。したがって,本件写真は原告の思想又は感情を創作的に表現した「著作物」(著作権法2条1項1号)に該当」するとしています。

写真の著作物性を否定した裁判例

東京地裁令和5年7月6日決定は、以下のとおり述べ、構図等において工夫をした形跡のない写真について著作物性を認めませんでした。

「本件写真は、発信者情報開示仮処分命令申立事件に関する申立書及びこれに関する書面をiPhoneで撮影したものであるところ、その内容は、「管轄上申書」と題する書面等を重ねた上、若干斜めに「発信者情報開示仮処分命令申立書」と題する書面を重ね、ほぼ真上からこれを撮影したものであり、本件写真の左右には余白があるものの、上記各書面は本件写真の大部分を占めており、そのほとんどの部分が写真の枠内に収まっていることが認められる。」
「上記認定事実によれば、本件写真の構図は、書面等をその大体の部分が写真の枠内に収まるようにほぼ真上から撮影するというごくありふれたものであり、光量、シャッタースピード、ズーム倍率等についても、原告において格別の工夫がされたものと認めることはできない。」
そうすると、本件写真は、ありふれた表現にとどまるものであるから、原告の思想又は感情を創作的に表現したものとはいえず、本件写真が著作物に該当するものと認めることはできない。」

 写真が著作物と言える要件

以上のとおり、

・構図

・カメラアングル

・シャッターチャンスの捕捉

・被写体の選択、配置、被写体への作為

・撮影時期・時間帯・天候・場所の選定

・撮影方法

に工夫をこらしたと認められれば、アマチュアが、スマホのようなもので撮影したようなものであっても著作物として認められることになります。

SNS等に投稿するような写真等は何らかの意味で工夫をしている事例が多いでしょうから、基本的には著作物に該当するくらいの感覚でいた方が無難と思われます。

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