
アパート経営は、借地借家法という法律、その他の法律に従いながら行わなければなりません。
そのため、対応に困る場面が多い大家さんも多くいらっしゃると思います。
そのような場合は弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお気軽にご相談ください。まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。
以下、簡単にアパート経営をめぐる法的問題について解説します。
1 契約解除について
アパートの賃借人が賃料を払わない、決められた用法を守らないなどの場合であっても、常に契約解除が有効となるわけではありません。
これは、借地借家法という法律で、賃貸借契約の更新拒絶や解約について、正当な事由がある場合でなければできないとされているからです。
以下、正当事由についての裁判例をご紹介します。
建物老朽化と賃貸借契約解除
東京地裁平成29年1月19日判決は、以下の状況において、建物老朽化による賃貸借契約解除を認めています。
・本件アパートは築後48年を経過した耐震性に問題のある建物であり,その耐震補強を行うには本件アパートの建て替えと同程度の費用を要すること
・本件アパートの被告以外の入居者らは既に本件アパートから退去していること
・被告は,引っ越しに要する費用につき大家からその支払を受けることができれば,本件建物と同様の条件の物件に転居することは可能
・被告は,生活保護受給者であるところ,大家による更新拒絶の正当事由を補完する財産上の給付としては,上記引っ越しに要すると考えられる費用その他本件に表れた一切の事情を考慮し,その額を35万円と認めるのが相当である。大家は,被告に対し,上記金員を支払う旨の申出をしている。
東京地裁平成19年12月11日判決は、以下の状況において、建物老朽化による賃貸借契約解除を認めませんでした。
・本件更新拒絶時において築74年の木造建物であることが認められるから、相当程度老朽化が進行しているであろうことは否定し難い。しかしながら、本件建物は、修理や手入れが行き届いていて、生活上の支障はないし、今直ちに取り壊さなければ安全面等において問題が生じるおそれがある状況にあるとも認められない
・大家本人は、他に自宅を保有しており、また、本件土地の代わりに、相続地にアパートを建築しているため、自ら本件建物の明渡しを受けてその敷地を利用する必要性は乏しい
・被告は、40年以上にわたって本件建物に居住しており、本件建物を明渡し、他の場所に転居することは、それ自体被告にとって精神的、肉体的に大きな負担となる上、転居先のあてがあるのであればともかく、それもない状態で、従前の地域社会や人間関係から切り離されて、新規の居住先で生活をしていくことも大きな負担となることが十分に予想されること
・大家から立退料の申し出はあり
以上のとおり、
・老朽化の程度(築年数だけではなく、建物の実際の状況も考慮)
・大家にとって賃借人を退去させる必要性の大きさ
・賃借人にとっての退去の不利益
などを主要な考慮要素として、立退料を補完的な考慮要素として正当事由の有無が判断されることになります。
用法義務違反と賃貸借契約解除
最高裁昭和47年11月16日判決は、土地賃貸借契約についてですが、用法違反による契約解除が認められるかどうかについて、違法性のある用法違反があったケースでも、近隣からの苦情が出たことがないことを理由に、解除を認めませんでした。
東京地裁平成20年4月23日判決は、無断で自動販売機を設置していた用法違反について、「その設置によって,本件建物の利用状況に変化を与えるものではないから,当時の賃貸人である西洋建物や原告との信頼関係が,賃貸借契約の継続を困難ならしめる程度に破壊されたとまでは評価することはできない。」として契約解除を認めませんでした。
東京地裁平成31年4月25日判決は、転貸可能な建物を賃借人が無断で民泊に使用させたというケースについて、以下とおり述べ、周辺住民とのトラブルがあったことなども踏まえ、賃貸借契約の解除を認めました。
「特定の者がある程度まとまった期間にわたり使用する住居使用の場合と,1泊単位で不特定の者が入れ替わり使用する宿泊使用の場合とでは,使用者の意識等の面からみても,自ずからその使用の態様に差異が生ずることは避け難いというべきであり,本件賃貸借契約に係る上記(1)の解釈を踏まえれば,転貸が可能とされていたことから直ちに民泊としての利用も可能とされていたことには繋がらない。本件建物を民泊の用に供することが旅館業法に違反するかどうかは措くとしても,前記認定事実によれば,現に,Bハイツの他の住民からは苦情の声が上がっており,ゴミ出しの方法を巡ってトラブルが生ずるなどしていたのであり,民泊としての利用は,本件賃貸借契約との関係では,その使用目的に反し,賃貸人である原告被承継人との間の信頼関係を破壊する行為であったといわざるを得ない。」
このように用法違反については、
・建物の利用状況に対する影響の大きさ
・近隣住民から苦情
・契約上想定されていた利用方法との乖離の大きさ
等から契約解除をなしうるかどうか判断されることになります。
判決で契約解除が認められたのに任意にでていかない場合の対応(強制執行)
裁判を起こし、契約解除を認める判決が得られたとしても、それで賃借人が出ていくとは限りません。
賃借人が任意に出ていかない場合、強制執行を行う必要があります。
裁判所に強制執行を申し立てると、まずは催告の日を指定されます。
この日には、執行官や債権者(代理人)が現地に行き、室内にも立ち入り、内部の状況を確認します。
施錠している場合もありますので、大家さんの持つ鍵を持参しない場合、開錠業者も同行することになります。
運送業者が立ち合い、費用の見積もりをすることもあります。
催告のときには、強制執行期日などを記載した紙を執行官が建物内に貼っておきます。
それでも強制執行期日までに退去してもらえない場合には、強制執行期日に、執行官や業者等が現地に赴き、業者が荷物を搬出し、鍵を取り換え、強制的に退去をさせることになります。
最後まで手続きを行う場合、数十万円を要する可能性があります。
ですから、ケースによっては、多少立退料を払ってでも、任意に出て行ってもらった方が安くあがる可能性もあります。
2 賃料の請求
賃料が支払われない場合、弁護士に依頼し、取り立てることもできます。
未払いが多く発生し、費用が心配な場合は顧問契約を締結することで費用を抑えることができる場合もあります。
賃料不払いについてお悩みの大家さんはまず弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお問合せください。
3 敷金について
敷金については、敷金を差し入れられた人でなくても、賃貸建物を譲り受けた人が返還義務を負うことに注意が必要です。
従来、競売、売買により賃貸建物を譲り受けた人が敷金返還義務を負うとされてきました。大阪高裁令和1年12月26日判決は、相続により建物の所有権を引き継いだ場合でも返還義務を引き継ぐとしています。
4 新潟でアパート経営についての大家さんのお悩みは弁護士齋藤裕にご相談ください
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