執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 児童相談所と一時保護 司法審査での争い方
児相による一時保護の要件
児童福祉法は、以下のとおり、一時保護について定めています。
第三十三条 児童相談所長は、児童虐待のおそれがあるとき、少年法第六条の六第一項の規定により事件の送致を受けたときその他の内閣府令で定める場合であつて、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。
横浜地裁平成24年10月30日判決は、一時保護の要件について、「児童福祉法33条1項において,児童相談所長は,必要があると認めるときは,児童に一時保護を加えることができると規定されているところ,一時的にせよ児童を保護者から強制的に引き離す行為であるから,合理的な根拠に基づいてされなければならず,その判断に合理的な根拠がない場合には,一時保護決定は違法となるものと解することができる。」としているところであり、児童虐待のおそれ等や必要性について「合理的な根拠」がなければ一時保護決定は違法となります。参照:一時保護の要件について判断した裁判例
また、大阪地裁平成17年10月14日判決は、一時保護における「必要性」の要件について、「当該児童が保護者のない児童であるか又は児童虐待を受けた児童であるなど保護者に監護させることが不適当な児童であって,法27条1項又は2項の措置を要すると認めるに足りる相当の理由があるときをいうものと解するのが相当である。」としています。
つまり、児童養護施設入所等の措置を要すると認めるに足りる相当な理由があるときに「必要性」があるということです。参照:一時保護における「必要性」要件について判断した裁判例
児相による一時保護についての司法審査
児童福祉法改正により、2025年6月1日からは、この一時保護について親が不同意の場合は原則として司法審査がなされることになります。
改正児童福祉法33条3項は以下のとおり定めます。参照:児童福祉法
「③ 児童相談所長又は都道府県知事は、前二項の規定による一時保護を行うときは、次に掲げる場合を除き、一時保護を開始した日から起算して七日以内に、第一項に規定する場合に該当し、かつ、一時保護の必要があると認められる資料を添えて、これらの者の所属する官公署の所在地を管轄する地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官に次項に規定する一時保護状を請求しなければならない。この場合において、一時保護を開始する前にあらかじめ一時保護状を請求することを妨げない。
一 当該一時保護を行うことについて当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の同意がある場合
二 当該児童に親権を行う者又は未成年後見人がない場合
三 当該一時保護をその開始した日から起算して七日以内に解除した場合
まず注意しなければならないのは、親が同意をしたら、従来と同じく、司法審査なしで、児相が恣意的な一時保護を行う可能性があるということです。
ですから、一時保護については、安易に同意せず、すぐに弁護士に相談し、同意すべきかどうかアドバイスを受けた方がよいです。
児相による一時保護についての裁判所での争い方
そして、裁判所での手続きについては、虐待等の事実関係の有無、一時保護までする必要性があるかどうか(施設等に入れる必要がないこと、親が児相の調査や指導等に協力的かどうかを含む)等について証拠や意見書を出すなどして争う必要がある場合もあるでしょう。
このような主張立証は弁護士に依頼すると良いと思います。
なお、最初の一時保護の場合、本来的に虐待等の有無についてはきっちりした証拠がないことが多いと思われます。
ですから、裁判所は、虐待等の有無について、一時保護の延長の場合よりは比較的緩い基準で「おそれ」を認める可能性があります。
2 2か月を超える一時保護を認める基準
児童福祉法33条12項は、「一時保護の期間は、当該一時保護を開始した日から二月を超えてはならない。」としています。
しかし、児童福祉法33条13項は、「児童相談所長又は都道府県知事は、必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。」として、2か月を超える一時保護を例外的に認めています。
この一時保護の延長についても、児童福祉法33条14項は司法審査が必要だとしています。
それでは、家裁はどのように2か月を超える一時保護を認めるか否か判断しているでしょうか?
大阪高裁平成30年6月15日決定は、以下のとおり述べ、2か月を超える一時保護を承認しています。
ⅰ 保護者は,児童らがいずれも長期間登校していなかったにもかかわらず,有効な対策を講じなかったばかりか,頻繁に転居を繰り返し,児童らの生活環境を変転させ,著しく不安定にした。
ⅱ 保護者の1人は,児童らと同居していた自宅内で覚せい剤を使用し,児童らの通報によって逮捕され,執行猶予付き有罪判決を宣告された。
ⅲ 保護者の1人は、本件一時保護後,起訴され,勾留中
ⅳ このような保護者らによる児童らの監護状況は,劣悪であり,児童らの福祉を著しく害するものであった
ⅴ 監護環境は、本件一時保護開始後2月を経過した時点においても,改善された形跡は全くなく,却って悪化している
ⅵ 児童相談所は,今後,児童らについて親権停止の申立てをする予定。そのための調査について、児童らが5名という多数である上,児童らの中には,学力遅滞の程度が著しく,あるいは,精神疾患や発達遅滞が窺われる者も含まれており,その抱える問題も深刻であることからすれば,上記調査等を尽くすためには,2月を超える期間を要する。
以上のとおり、虐待や不適切監護の重大性、一時保護後の改善状況、さらなる措置のために要する調査日数等が考慮され、2か月を超える一時保護が承認されています。
一時保護が子どもの学習の機会や生活の安定性を損なう可能性があることを踏まえると、2か月を超える一時保護の承認は厳格になされるべきでしょう。
3 一時保護の延長が承認された後の一時保護継続が違法とされた事例
なお、2ケ月を超える一時保護が家裁により承認されたとしても、児相としては一時保護を継続する理由がなくなった場合には、一時保護を解除しなければなりません。
大阪地裁令和4年3月24日判決は、子どもの両側頭頂骨骨折の事案について、医師が虐待の可能性がありとの鑑定を行い、それを受けて家裁が2ケ月を超える一時保護の承認を行ったというケースにおいて、承認を行った家裁において、鑑定書の信用性の検討が必要であり、そのこと等のために一時保護を承認したにも関わらず、児相において鑑定書の信用性を検討しないまま、漫然一時保護を継続したとして、承認の審判から1か月後の日以降の一時保護の継続は違法であったとしました。
児相としては、一時保護の延長が承認されたとしても、あくまで親子がともに暮らすことが大原則であり、一時保護の必要性が本当にあるのかどうか不断に問う姿勢が必要です。
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