児童相談所による2か月を超える一時保護が不当な場合の対応

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 児童相談所と一時保護

児童福祉法は、以下のとおり、一時保護について定めています。

第三十三条 児童相談所長は、必要があると認めるときは、第二十六条第一項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。参照:児童福祉法

この一時保護の期間は原則2月以内です。

しかし、児童福祉法33条4項は、「必要があると認めるときは、引き続き第一項又は第二項の規定による一時保護を行うことができる。」として、2か月を超える一時保護を例外的に認めています。

一時保護を2か月を超えて行うについて、児童福祉法33条5項は、以下のとおり、原則として家裁の承認が必要だとしています。

前項の規定により引き続き一時保護を行うことが当該児童の親権を行う者又は未成年後見人の意に反する場合においては、児童相談所長又は都道府県知事が引き続き一時保護を行おうとするとき、及び引き続き一時保護を行つた後二月を超えて引き続き一時保護を行おうとするときごとに、児童相談所長又は都道府県知事は、家庭裁判所の承認を得なければならない。ただし、当該児童に係る第二十八条第一項第一号若しくは第二号ただし書の承認の申立て又は当該児童の親権者に係る第三十三条の七の規定による親権喪失若しくは親権停止の審判の請求若しくは当該児童の未成年後見人に係る第三十三条の九の規定による未成年後見人の解任の請求がされている場合は、この限りでない。

それでは、家裁はどのように2か月を超える一時保護を認めるか否か判断しているでしょうか?

2 2か月を超える一時保護を認める基準

大阪高裁平成30年6月15日決定は、以下のとおり述べ、2か月を超える一時保護を承認しています。

ⅰ 保護者は,児童らがいずれも長期間登校していなかったにもかかわらず,有効な対策を講じなかったばかりか,頻繁に転居を繰り返し,児童らの生活環境を変転させ,著しく不安定にした。

ⅱ 保護者の1人は,児童らと同居していた自宅内で覚せい剤を使用し,児童らの通報によって逮捕され,執行猶予付き有罪判決を宣告された。

ⅲ 保護者の1人は、本件一時保護後,起訴され,勾留中

ⅳ このような保護者らによる児童らの監護状況は,劣悪であり,児童らの福祉を著しく害するものであった

ⅴ 監護環境は、本件一時保護開始後2月を経過した時点においても,改善された形跡は全くなく,却って悪化している

ⅵ 児童相談所は,今後,児童らについて親権停止の申立てをする予定。そのための調査について、児童らが5名という多数である上,児童らの中には,学力遅滞の程度が著しく,あるいは,精神疾患や発達遅滞が窺われる者も含まれており,その抱える問題も深刻であることからすれば,上記調査等を尽くすためには,2月を超える期間を要する。

以上のとおり、虐待や不適切監護の重大性、一時保護後の改善状況、さらなる措置のために要する調査日数等が考慮され、2か月を超える一時保護が承認されています。

一時保護が子どもの学習の機会や生活の安定性を損なう可能性があることを踏まえると、2か月を超える一時保護の承認は厳格になされるべきでしょう。

3 一時保護の延長が承認された後の一時保護継続が違法とされた事例

なお、2ケ月を超える一時保護が家裁により承認されたとしても、児相としては一時保護を継続する理由がなくなった場合には、一時保護を解除しなければなりません。

大阪地裁令和4年3月24日判決は、子どもの両側頭頂骨骨折の事案について、医師が虐待の可能性がありとの鑑定を行い、それを受けて家裁が2ケ月を超える一時保護の承認を行ったというケースにおいて、承認を行った家裁において、鑑定書の信用性の検討が必要であり、そのこと等のために一時保護を承認したにも関わらず、児相において鑑定書の信用性を検討しないまま、漫然一時保護を継続したとして、承認の審判から1か月後の日以降の一時保護の継続は違法であったとしました。

児相としては、一時保護の延長が承認されたとしても、あくまで親子がともに暮らすことが大原則であり、一時保護の必要性が本当にあるのかどうか不断に問う姿勢が必要です。

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