マタハラとしての解雇の効力

さいとうゆたか弁護士

1 法律とマタハラ解雇

男女雇用機会均等法は以下のとおり定めます。

(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
第九条 3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
育休法は以下のとおり定めます。
(不利益取扱いの禁止)
第十条 事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

 

ですから、産休・育休を理由とする解雇が無効であることは明らかです。

問題は、使用者は、実質的には産休・育休を理由とした解雇でも、そのようには言わないと言う事です。

以下、産休・育休を理由とした解雇かどうか争われた事例についてみていきます。

2 産休・育休取得を理由とした解雇かどうか争われた事例

東京地裁平成29年7月3日判決

東京地裁平成29年7月3日判決は、解雇が産休・育休取得を理由としたものかどうか争われた事例について、以下のとおり産休・育休取得を理由としたものとして解雇を無効とし、慰謝料の支払いも命じました。

同判決は、一般的な基準として、「事業主において,外形上,妊娠等以外の解雇事由を主張しているが,それが客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないことを認識しており,あるいは,これを当然に認識すべき場合において,妊娠等と近接して解雇が行われたときは,均等法9条3項及び育休法10条と実質的に同一の規範に違反したものとみることができるから,このような解雇は,これらの各規定に反しており,少なくともその趣旨に反した違法なものと解するのが相当である。」とします。

そのうえで、解雇理由とされている業務妨害や,業務命令違反,職場秩序のびん乱や,業務遂行能力及び資質の欠如について、

・業務能力は高かったこと

・それまで解雇理由とされた事象を理由に懲戒等されてこなかったこと

・労働者に何らかの問題行動があって,職場の上司や同僚に一定の負担が生じ得るとしても,例えば,精神的な変調を生じさせるような場合も含め,上司や同僚の生命・身体を危険にさらし,あるいは,業務上の損害を生じさせるおそれがあることにつき客観的・具体的な裏付けがあればともかく,そうでない限り,事業主はこれを甘受すべき

等として、解雇に客観的に合理的な理由を欠いており,社会通念上相当であるとは認められず、解雇は無効としました。

そして,解雇が妊娠等に近接して行われていることから,解雇は均等法9条3項及び育休法10条に違反し,少なくともその趣旨に反したものであって,この意味からも無効というべきであるとしました。

このように、マタハラとしての解雇も、基本的には通常の解雇と同じような枠組みで判断されます。

ただし、妊娠等に近接して解雇された場合、非合理な理由による解雇ではないかとの疑いが通常の場合より生じやすく、解雇のハードルは高くなるものと考えます。

東京高裁令和3年3月4日判決

東京高裁令和3年3月4日判決も、平成29年4月1日から産休、5月10日に出産、平成30年5月1日からの職場復帰を希望していた労働者が5月6日付で解雇されたという事案について、解雇の客観的理由を欠き、社会通念上相当であると認められないのみならず、均等法9条4項に違反するとして、解雇無効とし、あわせて慰謝料請求も認めました。

慰謝料について、同判決は、解雇に伴う精神的苦痛は通常は賃金等の支払により補填されるという一般論を述べつつ、

一審原告は、育児休業後の復職のため第1子の保育所入所の手続を進め、入所が決まって、一審被告に復職を申し入れたにもかかわらず、復職の直前に客観的合理的理由のないまま復職を拒否され、均等法9条4項に違反する本件解雇をされ、第1子の保育所入所も取り消されるという経緯をたどって」いるとして慰謝料請求を認めました。

均等法違反のマタハラ解雇については慰藉料が認められやすいとも考えられるところです。

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労働時間一般についての記事もご参照ください。
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