執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 一時保護中であっても、児童と親の面会は最大限尊重されるべきこと
児相による一時保護中に、恣意的な面会制限がなされる事例が後をたちません。
保護者と子どもとの面会は原則として尊重されなくてはなりません。
それは子どもの権利条約9条が「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」としていることからも当然のことです。参照:子どもの権利条約
よって、面会制限が例外的に認められる場合以外、児童相談所は面会制限をしてはならないのです。
2 児童相談所が子どもと保護者の面会を制限できる場合
児童相談所が児童と保護者の面会を制限する根拠となる法令
児童虐待防止法12条は、児童虐待があった場合、被害児童の保護に必要な範囲で、保護者と一時保護中の被害児童との面会や通信を制限することができるとしています。参照:児童虐待防止法
令和8年4月1日施行の「改正」児童虐待防止法12条3項では、「一時保護が行われている児童に対して当該児童の保護者が児童虐待を行った疑いがあると認められる場合において、当該児童と当該保護者との面会又は通信を認めたとすれば当該児童の心身に有害な影響を及ぼすおそれが大きいと認めるときは、児童相談所長は、内閣府令で定めるところにより、当該面会又は通信の全部又は一部を制限することができる。」としています。
つまり、令和8年4月1日からは、児童虐待の認定がなされていない場合でも、虐待があった疑いがあれば、面会制限がなされることになります。
いずれにせよ、最低限児童虐待があること、あるいはその疑いが面会制限などの要件をされています。
また、家裁に対し、児童福祉法28条に基づく施設入所などの申立をする際に、家裁が審判前の仮処分として面会制限をすることができるとされます。参照:児童福祉法
「児童虐待防止法新第12条第3項の解釈に関する方向性(案)」
子ども家庭庁の児童虐待防止対策部会(令和7年6月24日)では、「児童虐待防止法新第12条第3項の解釈に関する方向性(案)」が提出され、どのような場合に一時保護中の面会制限がなされうるのか、一定の指針が示されました。参照:【資料3】令和7年児童福祉法等改正の施行に向けた検討について
面会制限ができる場合について、「児童虐待防止法新第12条第3項の解釈に関する方向性(案)」は以下のとおり、面会制限が認められるべき場合について述べています。
ⅰ 児童が虐待を受けたことを開示している又は通告の内容等から虐待が強く疑われる中で、保護者が虐待を否定しているケース
ⅱ 実施や児童の保護に支障が生じうる場合
ⅲ 児童が保護者との面会通信自体を拒絶している意向を有する、保護者に対する心身の拒否反応が生じているその他これに類するケース
ⅳ 保護者との面会通信が児童の心身を傷つけるおそれがある場合
これまで、児童相談所の恣意的な判断にのみ委ねられてきた面会制限について一定のルールが定められることは評価できます。
しかし、個々の例については、児相側の恣意的判断がなおありうるところであり、厳格な適用を求めていく費用があります。
なお、同案においては、「一時保護開始時に面会をさせることを条件として一時保護への同意を求めること、児童相談所の業務上の都合のみを理由に面会通信制限の方法や指導に一方的に従うことを条件として面会通信を許可すること、児童に事実と異なる説明をすることで児童に保護者との面会通信を拒否させ、面会させないといったことはあってはならないこと。」を記載しており、恣意的な面会制限を争っていくために非常に重要な点となります。
3 児童養護施設に入っている児童と母親との面会を制限する行政指導が違法とした裁判例(宇都宮地裁令和3年3月3日判決)
現実には児童相談所が一時保護中の児童と保護者との面会等を制限する事案があとを絶ちません。
そのため各地で面会制限の違法性を問う訴訟が起こされ、児相側の賠償責任が認められています。
以下、裁判例についてご紹介します。
宇都宮地裁令和3年3月3日判決は、児童相談所長において、児童養護施設に入っている児童と母親との面会を制限する行政指導をしたことについて、違法と認め、慰謝料の支払いを命じました。
面会制限を違法と判断する判決は珍しいと思われますので、以下、ご紹介いたします。
児童相談所が面会を制限する行政指導が違法とされる基準
判決は、施設入所措置の目的は虐待を受けた児童の保護、自立の支援、親子の再統合を目的とするものとします。そして、面会交流は再統合にとって重要な手段であるとの認識を示します。
判決は、このような認識を前提に、
ⅰ 保護者において行政指導に従わないことについて真摯かつ明確に表明し、直ちに指導の中止を求めており、
ⅱ 保護者が受ける不利益と行政指導の目的とする公益上の要請とを比較衡量し、行政指導としての面会通信制限に対する保護者の不協力が社会通念に照らし客観的にみて到底是認し難いといえる特段の事情がない
という場合には、面会を制限する行政指導は違法となるとしました。
当該事案における具体的あてはめ
そして、裁判所は、母親について、児童に対して直接身体的虐待をしたものではなく、これに適切な対応をしなかったものにとどまるとして、特段の事情がなく、面会制限の行政指導は違法となるとしました。
裁判所は、母親は親子関係の再統合を図る上でいかなる監護上の問題を抱えているのかについて内省を深め、十分な認識を有する状況にあったとは言えないとしました。
しかし、これらの課題は児童の支援プログラムによって解消すべき問題であり、面会制限を正当化するものではないとしています。
他方、父親については、相当長期にわたって児童に身体的虐待を行ってきて、児童に肉体的精神的ダメージを与えたことなどを理由として、特段の事情があり、面会制限の行政指導は違法ではないとしました。
一定の場合において親子間の交流は子どもの福祉に資するものですし、それをむやみに制限した児相の行政指導を違法とした上記判決は妥当なものと言えるでしょう。
4 一時保護中の面会制限について判断した大阪地裁令和4年3月24日判決
上記判決後、大阪地裁令和4年3月24日判決も、一時保護中の面会制限について違法とし、国家賠償を命じました。参照:一時保護中の面会制限を違法とした判決
児相による面会制限が違法となる要件
同判決は、まず、「行政指導として面会制限は,保護者の任意の協力によって実現されたにとどまらず,保護者への事実上の強制によって実現されるに至った場合には,児童相談所の人的・物的態勢によっては面会の実施が困難であるなどの特段の事情がない限り,上記の行政指導の一般原則のほか,児童の権利に関する条約の趣旨にも違反するものであり,国家賠償法1条1項の適用上違法であると解される」との判断基準を示します。
宇都宮地裁判決とは表現において微妙に異なるものの、宇都宮地裁判決と同様、保護者が面会を求めているのに面会交流をさせないことについては特段の事情がない限り違法となるとの基準を示したものです。
児相による面会制限の違法性についての当てはめ
同判決は、その上で、
・原告は,同年1月7日には,児童相談所に電話で,面会制限の法的根拠について尋ねていること,
・同月9日の児童相談所職員との面会においては,同席した弁護士が,原告と本件児童との面会を求め,そのためのルール作りをしてもらいたい旨を要望したが,児童相談所職員は現時点では面会をさせられない旨回答したこと
・その後も,原告は,同年2月14日,児童相談所職員に電話で,「やっぱり私としては帰していただきたい」などと話し,本件一時保護に同意できない意思を明確に表明したこと
・児童が一時保護され,本件児童の一時保護の委託先の名称・住所等が開示されていなかった原告としては,本件センターの職員から本件児童との面会の要望を断られると,それ以上に採り得る手段はなかったこと
などの事情を踏まえ、事実上の強制により面会制限が実現されるに至ったというべきであり,また、児童相談所の人的・物的態勢により面会の実施が困難であったなどの特段の事情があったということもできないため、面会制限は違法であるとしました。
控訴審である大阪高裁令和5年8月30日判決も、賠償責任を認めるとの結論を維持しました。
保護者が児童相談所に一時保護中の児童に面会を求めているのに行政指導により拒否した場合には原則違法という判断が定着しつつあるように思われます。
5 児相による面会制限が例外的に適法となるとした裁判例(大阪高裁令和5年12月15日判決)
大阪高裁令和5年12月15日判決は、児相による面会制限について、適法との判断を示しました。
児相による面会制限が適法となるための要件
同判決は、児相による面会制限が適法となる要件について、「児童の生命又は身体の安全を確保するため緊急の必要があるとはいえなくとも、親権者等による一時保護に基づく児童に対して採られる措置を不当に妨げる行為が現に行われ、又は行われると認められるために監護等の措置を採ることが必要な場合には、児童の福祉を保障する観点から、措置の内容や必要性等に照らし必要かつ相当と認められる範囲で、親権者等の意に反する監護等の措置を採ることも許される」としています。
面会制限が適法とされた事実関係
この判決の事案では、
ⅰ 児童に対する暴行が行われたが、親がそれが虐待に該当することを否認していた
ⅱ 児童が親との面会を一貫して拒否している
ⅲ 児童は中学生で自己の意思を表明できる
という事情が認定されていました。
その上で、児相は、段階に応じて親子の再統合を図るために、面会も段階的に進めようとしていたと認定されています。
裁判所は、そのような事情において、面会制限が適法とされる場合に該当すると判断をしました。
年長の子どもが面会を嫌がっているという事案であり、認定事実を前提とすれば、面会制限はある程度理解できる事案だったかと思います。
しかし、裁判所の定立した、「親権者等による一時保護に基づく児童に対して採られる措置を不当に妨げる行為が現に行われ、又は行われると認められる」との要件は、児相側に都合よくつかわれるおそれのある要件であり、安易な適用は許されるべきではないでしょう。
6 児童の意思などを理由に面会制限を適法とした裁判例(東京地裁令和6年4月19日判決)
東京地裁令和6年4月19日判決は、面会制限を適法としています。
同判決は、
ⅰ 児童が自ら親元を離れるために相談所に保護を求めたこと
ⅱ 児童において、家庭復帰を望んでおらず、両親と面会通信したいとの意向を持っていなかったこと
から面会制限は適法としています。
同判決の児童は中学生であり、中学生が面会を望んでいないという態度は尊重されるべきです。
ですから、面会制限を適法とした判断自体、理解に苦しむということはありません。
他方、当該児童は、最終的には保護所を抜け出し、親元に戻っています。
そこからすると、面会を望まないという児童の意思が真意だったのかどうか、疑問があります。
反抗期児童において親と会う意向を示さないことは一般的にありうるところであり、それだけで安易に面会交流をさせないというやり方は望ましいとは言えないでしょう。
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