ソリリス投与中の患者が髄膜炎菌感染症に罹患した場合と医療過誤

さいとうゆたか弁護士

1 ソリリスと髄膜炎菌感染症

ソリリスは溶血抑制作用のある薬であり、発作性夜間ハモグロビン尿症に使用されます。

しかし、ソリリスについては、抵抗力の低下により髄膜炎菌感染症を誘発するという副作用もあります。

髄膜炎菌感染症が生じた場合には速やかに抗菌薬を投与すべきとされています。

京都地裁令和3年2月17日判決は、ソリリスの投与を受けていた患者が、髄膜炎菌感染症に罹患し、死亡したという事案について、医療機関側に抗菌薬を投与すべき義務違反を認め、賠償を命じました。

薬剤の副作用としての感染症に対する対応が不十分だった事案についての裁判例として参考になるものですので、以下、ご紹介します。

2 京都地裁判決

京都地裁は、「医師は、本件診察の時点・・・において、高熱、頭痛、嘔吐等の症状がみられたことをもって、細菌感染についても相応の疑いを抱いていたのであるから、添付文書に従って速やかに抗菌薬を投与すべき注意義務があったといえる」として、ソリリスの投与を受けていた患者について高熱などの症状があった場合に、細菌感染を疑い、抗菌薬を投与すべき義務を認めました。

その上で、医師が抗菌薬を投与しなかったことは過失にあたるとしました。

医療機関側は、抗菌薬を投与しないで経過観察をしたのは医師の裁量内だと主張しました。

しかし、判決は、ソリリスの添付文書上は上記注意義務の内容のように対応すべきと記載されているのであって、「あえて添付文書と異なる経過観察という選択が裁量として許されるというためには、それを基礎づける合理的根拠がなければならない」とし、当該事案においてはそのような合理的根拠はなく、抗菌薬を投与しないことは医師の裁量としても許されないとしました。

そして、髄膜炎菌感染症の抗菌薬への反応が良いことを踏まえ、抗菌薬を投与しなかった過失と死亡との因果関係も認めました。

合理的理由もなく薬剤の添付文書と異なる医療をすることは許されないものであり、抗菌薬を投与しなかったことを過失と認めた判決は妥当なものと言えるでしょう。

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