執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 外資系企業による整理解雇
外資系企業による大量解雇が度々話題となっています。
これまでも多くの外資系企業による整理解雇がなされ、裁判で争われてきました。
私も外資系企業による解雇事件の裁判の経験がありますが、少なくとも本社は日本の解雇法制を一顧だにしない姿勢であり、かなり特殊な対応でした。
2 外資系企業による整理解雇についての学説
通常、整理解雇については、
ⅰ 人員削減の必要性、
ⅱ 人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性
ⅲ 被解雇者選定の妥当性
ⅳ 手続きの妥当性
の4要素ないし4要件によりその有効性が判断されるべきとされてきました。
この点、整理解雇の要件を示した最高裁判決をご参照ください。
外資系企業による整理解雇については、一定の修正がなされるべきとの指摘もあります。
菅野和夫著「労働法 第12版」799頁は、外資系企業の中には、「転職市場の存在を前提に、部門や職種の専門代を重視した厳格な定員管理を行い、職務と成果に応じた高レベルの賃金・処遇制度を採用しているものが多」い、「このような企業が景気変動や構造変化に対応する際には、内部労働市場の雇用調整手法を動員して解雇を回避しようとするよりも、不要となった職務に就く従業員に対して『パッケージ』と称される退職条件の提案を行いつつ転職を促し、これに応じなければ整理解雇を実施することになりやすい」とし、このような企業による整理解雇については、4要素説に照らした判断となりつつも、その雇用・処遇の仕組みの違いを考慮に入れる必要があるとしています。
3 外資系企業による整理解雇についての裁判例
東京地裁令和3年12月13日判決は、外資系企業による整理解雇について、企業側が、外資企業において整理解雇法理が妥当しない旨主張したのに対し、「本件解雇の有効性の判断において,雇用慣行等を背景とした原被告間の労働契約の内容を踏まえるべきことと上記諸要素を考慮すべきことは何ら矛盾するものではなく,上記判断枠組み自体を否定すべき理由はないというべきである。」としました。
そして、最終的には、「本件解雇は,客観的に合理的な理由があり,社会通念上相当であるとは認められない。」として整理解雇を有効としました。
整理解雇法理が外資企業にも妥当するとしつつ、外資企業であるが故にその適用が多少緩やかになるかの判断です。
外資系企業による整理解雇については、このように整理解雇法理を緩やかに解する裁判例が複数あります。
他方、日本企業による整理解雇と区別をしているように見えない裁判例も多くあります。
例えば、東京地裁平成24年4月20日判決は、解雇回避努力について、「被告は,被告が外国資本企業であることから,国内資本企業よりも競争力が必要であり,要求すべき解雇回避努力の水準は低い旨主張するが,国内資本,外国資本のいずれの企業も競争力を必要としているから,かかる主張は失当である。」としていますが、妥当と言うべきでしょう。
東京地裁平成13年12月19日判決は、人選基準が53歳以上の者とされていたケースで、「我が国の労働市場の実情からすれば再就職が事実上非常に困難な年齢であるといえるから,本件の事実関係の下においては,早期退職の代償となるべき経済的利益や再就職支援なしに上記年齢を解雇基準とすることは,解雇後の被用者及びその家族の生活に対する配慮を欠く結果になる」として、人選基準の合理性を日本における現状をもとに判断すべきとしています。
少なくとも日本は未だに雇用流動性が高いとは言えませんし、日本で解雇を行う以上、厳格に、日本での実情に沿った形で整理解雇法理を適用するべきだと考えます。
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