脳膿瘍と医療過誤

さいとうゆたか弁護士

1 脳膿瘍とは?

脳膿瘍とは、脳内に膿がたまる疾患です。

発生頻度は高くはありませんが、適切な治療をしないと重篤な後遺障害をもたらすことがありえ、適切な診断が求められます。

2 脳膿瘍と医療過誤

脳膿瘍について適切な治療をしなかったために患者に脳ヘルニアが生じ、重篤な後遺障害が残ったことについて病院側に損害賠償責任を認めた裁判例として鹿児島地裁令和4年4月20日判決があります。

  脳膿瘍であることを疑うべきであったこと

同判決は、「脳膿瘍は、造影MRI画像において、リング状増強効果を示し、かつ、拡散強調像において、病変の内部が著名な高信号を示し、このような画像所見を示す場合には出血がない限りは脳膿瘍と考えてよいとされていた。」ところ、当該被害者については、「頭部CT検査及びMRI検査の結果をみると、造影MRI画像においてリング状増強効果を伴う病変が認められ、拡散強調像において、当該病変の内部が著名な高信号を示している。」、「CT画像における高吸収域及びT1強調像における高信号域がいずれも存在せず、当該病変内で出血が生じていたとは認められない(甲B25の2、丙B9の1)」等の事情があり、医師としては、「さらなる検査等を行って原告の右脳実質内に生じていた病変が脳膿瘍である可能性を否定できるような特段の事情を認めた場合でない限り、これが脳膿瘍である疑いが高いと診断すべきであったというべきである。」としました。

  医師がとるべきであった措置

その上で、判決は、医師としては、脳膿瘍の疑いを踏まえ、抗菌薬投与と穿刺排膿術を行うべきであったが、これをしなかったとして、過失を認めました。

  過失と脳ヘルニア等との因果関係

判決は、

・脳ヘルニアは、脳室非穿破の症例に限定すれば致死率は3.4%であり、治療開始時に意識清明であった症例に限定すれば致死率は0%であるとの報告もあること

・本件診察当時は、患者は意識が清明であり、脳膿瘍の脳室穿破も生じていなかったこと

・抗生物質が有効であったこと

を踏まえ、上記過失と脳ヘルニア等との因果関係を認めました。

 判決の評価

脳膿瘍のように頻繁には見られない疾患であっても、重篤な結果を招く疾患については、医療水準に基づきつつ、迅速かつ慎重な診断がなされるべきことは当然です。

医師側がそれを怠り、重篤な結果を招いた以上、賠償責任を認めるという結論は妥当だったと言えます。

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