傷病休職があったとき、どのような場合に復職、退職、解雇となるか? 休職代行もお任せ下さい

労災、解雇問題

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 傷病休職とは?

傷病休職とは、労働者に対し、一定期間業務外の傷病による休職を認めるものです。

このような制度を設けるかどうかは会社次第です。

また、傷病休職の際に賃金を支給するかどうかも会社次第です。

治癒しないまま傷病休職期間を経過した場合、自然退職か解雇となり、治癒していれば復職ということになります。

2 傷病休職制度における「治癒」とは何か?

傷病休職制度における「治癒」の意味

そこで、傷病休職制度における「治癒」とは何かが問題となります。

この点、治癒について、東京地裁令和6年5月28日判決は、「債務の本旨に従った労務提供が可能な程度に回復したこと」をもって治癒としています。

この点、休職時点で就業していた職を遂行することができないとしても、現実的にその労働者が担当しうる他の職を遂行しうる場合、治癒と言え、解雇等は許されません。

他の仕事をすることができる場合に「治癒」を認めるべきとした判例

この点、職務の遂行能力についての最高裁平成10年4月9日判決は、「労働者が職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合においては、現に就業を命じられた特定の業務について労務の提供が十全にはできないとしても、その能力、経験、地位、当該企業の規模、業種、当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易等に照らして当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお債務の本旨に従った履行の提供があると解するのが相当である。」と同旨を述べています。参照:職務の遂行能力についての判例

同最高裁判決を踏まえ、大阪地裁平成11年10月4日判決は、以下のとおり述べ、労働者が特に限定せずに職場復帰の意思を示している場合、使用者から指示される措置可能な業務について労務の提供を申し出ているというべきだとしました。

「労働者が私傷病により休職となった以後に復職の意思を表尓した場合、使用者はその復職の可否を判断することになるが、労働者が職種や業務内容を限定せずに雇用契約を締結している場合においては、休職前の業務について労務の提供が十分にはできないとしても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その社員の配置や異動の実情、難易等を考慮して、配置替え等により現実に配置可能な業務の有無を検討し、これがある場合には、当該労働者に右配置可能な業務を指示すべきである。そして、当該労働者が復職後の職務を検定せずに復職の意思を示している場合には、使用者から指示される右配置可能な業務について労務の提供を申し出ているものというべきである。」

治癒の立証責任は労働者にあるとした裁判例

就業が可能であり、治癒していると言えるかどうかについて、東京地裁平成29年3月29日判決、東京地裁平成24年12月25日判決は、労働者側に立証責任があるとしています。

ただし、東京地裁平成24年12月25日判決は、労働者において配置される可能性のある業務に従事することができることを立証すれば就業可能性は推定されるとして、立証の負担を軽減しています。参照:傷病休職後の解雇についての東京地裁平成24年12月25日判決

近いうちに治癒が見込まれる場合には解雇が認められないとした裁判例

解雇時点で治癒していないとしても、近いうちの回復可能性がある場合には解雇は許されないと考えられます。東京地裁平成22年3月24日判決は、主治医が「病状が安定すれば、復職も可能と思われる」と診断していたこと、解雇後に労働者の病状が回復していたことも根拠に解雇を無効としています。

テスト出勤時における賃金についての裁判例

なお、治癒しているかどうか判断するためにテスト出勤がされることもあります。

企業は試し出勤の状況を踏まえ、復職か解雇かの判断をすることになります。

東京地裁平成28年9月28日判決は、以下のとおり述べ、試し出勤の結果を踏まえなされた解雇を無効としています。

「原告は,感染症により一日休んだほか,遅刻,早退等なく試し出勤の予定どおり出社,退社できており,勤怠に関しては問題が見受けられず,さらに,原告が提出したA医師作成の平成24年5月26日付け診断書には抑うつ状態とされていたものの,通常勤務が可能で残業制限が解除できる状態であるとされていた。そして,この診断書を前提とすると,被告が本件通知書を原告に交付した平成24年6月11日の段階では,原告のうつ病又は抑うつ状態は,完治していないとしても従前の職務を通常程度行うことができる状態に至っていたか,少なくとも相当の期間内に通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込まれる状況にあったと判断される。」

なお、名古屋高裁平成30年6月26日判決は、テスト出勤中について賃金の定めがない場合、最低賃金額が支払われるべきとしています。

主治医の診断書のみで復職可能性を認めることはできないとした裁判例

患者のことを一番わかっているのは言うまでもなく主治医です。

しかし、主治医は、治療をその役割としているので、主治医による復職可能だとの判断があっても、それだけで復職可能とは言えないとする裁判例が多くあります。

東京地裁令和6年5月28日判決は、以下のとおり述べ、主治医の診断のみでは復職可能とは言えないと判断しています。

「主治医は患者の治療を任務としており、患者の職場の実情には通じておらず、復職した場合に債務の本旨に従った労務提供が可能なのか、復職のため職場においていかなる配慮が必要なのかといった観点からの検討はしない立場にあり、復職可能との主治医の診断書の存在をもって就業可能との立証がされたとはいえない。したがって、原告が主治医から診療情報の提供を受けた産業医の意見を踏まえた復職審査を必要と判断したのは相当である。」

ただし、会社の立場を代弁しがちな産業医の判断が常に優先するというものでもなく、病状等については主治医の判断が尊重されるというべきでしょう。

主治医との面談がなされない場合に復職を認めないことの合理性

企業の中には、主治医との面談ができない場合には復職をさせない、あるいは主治医の診断書を受理しないとの扱いをすることがあります。

東京地裁令和2年8月27日判決は、以下のとおり述べ、主治医との面談ができない場合には主治医診断書を受け付けないとの就業規則に基づく復職拒否対応を合法としました。

「医師の診断書は,被告においてこれを閲読しただけでその意味内容や診断理由を十分に理解することができるとは限らないことから,被告が,診断内容を正確に理解して傷病休職中の職員の復職の可否を判断するために,主治医と面談し,主治医から直接に事情聴取をすることは必要であり,これについて職員に協力を求めることは合理的である。そして,職員が正当な理由なく協力を拒絶した場合には,被告において診断書の内容を正確に理解することが困難となる以上,当該診断書を不受理とすることはやむを得ないというべきである。」

しかし、診断書及び労働者の様子によって復職可能性を判断しうる場合もありうるのであり、一律に主治医面談が必要と言えるか疑問があります。

3   傷病を理由とする解雇においてとられるべき手続き

傷病を理由とする解雇が問題となった東京地裁平成22年3月24日判決は、使用者が労働者の主治医の意見を聞かずに解雇をしたことについて、医師も含めた三者面談までは行わないにしても、「人事担当者である丙川教頭らが、医師に対し、一度も問い合わせ等をしなかったというのは、現代のメンタルヘルス対策のあり方として、不備なものと言わざるを得ない」として、それも踏まえ解雇を無効としました。

少なくとも労働者と使用者の復職可能性についての見解に相違がある場合等においては、使用者が主治医に問い合わせもしなかったことは解雇の効力に影響を与えると考えるべきでしょう。

4 労災に該当する場合と傷病を理由とする解雇・自然退職の効力

労災による療養と解雇制限

労災で休職している場合、その期間中の解雇は許されません(労基法19条1項)。

ですから、傷病休職という名目だろうが、その傷病が業務上のものであれば、療養中の解雇は許されません。

労災による療養と自然退職

多くの事業所において、傷病休職が一定の期間を超える場合、自然に退職するとの制度を設けていることがあります。

しかし、自然退職については解雇の意思表示がないため、労基法19条1項が適用されないようにも思われます。

この点、仙台高裁令和6年2月20日判決は、「法人が、労働者に対して休職を命じ、その休職命令の期間が経過したことを理由として、就業規則の規定に基づいて労働者を自然退職扱いとしたのは、就業規則の規定と休職命令によって、労働者の雇用契約の効力を失わせ、解雇と同じ効力を生じさせたものであるから、労働者が業務上の疾病にかかり療養のために休業していた期間にされた自然退職扱いは、労働基準法19条1項の規定に違反し、効力を生じない」としました。

このように、名目が自然退職だから、法的規制を受けず、自由に退職させることができるわけではありません。

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