内視鏡治療と医療過誤

さいとうゆたか弁護士

1 内視鏡治療とその危険性

内視鏡治療とは、「早期のがんを切除したり、がんによって起こる症状を和らげたりするために、内視鏡を使って行う治療のこと」であり、「口や肛門、尿道から内視鏡を挿入して治療」します(国立がん研究センターサイト内視鏡治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp))。

内視鏡治療は入院期間が短期間で済み、患者への負担が小さいなどのメリットもあります。

しかし、事故も少なからず発生しており、内視鏡手術を行うのに適した症例であるかどうか等について適切に判断することが重要です。

以下、内視鏡治療により生じた事故について、医師側の賠償責任が認められた事例を紹介します。

2 ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で患者が死亡した事例

東京地裁令和3年8月27日判決は、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)により患者が死亡したというケースについて、適応を欠く手術が行われたとして、医師側の賠償責任を認めました。

同判決は、

・ESDに係る各ガイドラインにおいて、病変が一括切除できる大きさと部位にあることが基本的な考え方とされているが、当該患者はこの条件を満たしていなかったこと

・術前の造影CTで異常に太い腫瘍内血管が見つかっていたこと

・患者が84歳と高齢であったこと

などの事情を踏まえ、患者がESDを希望していたという事情があったとしても、出血リスクが高く、患者がそれに耐えがたいことが想定されたとして、ESDは適応を欠くものだった、それにも関わらずESDを実施したことについて医師には注意義務違反があったとしました。

医師としては、ガイドライン等に照らし、内視鏡治療に適応があるかどうか慎重に検討する必要があり、これを怠り、事故が発生した場合、医師側に賠償責任が認められる可能性があることになります。

3 EPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術)により十二指腸穿孔が生じた事例

東京地裁平成23年6月9日判決は、通常の場合より十二指腸の腸壁が脆弱な患者について、EPBD(内視鏡的乳頭バルーン拡張術)を実施した場合に「その部分に穿孔を生じる危険性が正常な腸壁の例と比較して高いこと,そして,穿孔が生じた場合,消化液などが腸管外に洩れ,生命の危険も生じさせる重篤な症状を呈するおそれがあり,緊急手術が必要になること」を医師が具体的に説明しなかったとして、説明義務違反及び損害賠償責任を認めました。

他の治療法と同じく、内視鏡治療についても適切な説明がなされない場合には説明義務違反として、因果関係のある損害について賠償責任が発生する可能性があります。

4 新潟で医療過誤のお悩みはご相談ください

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。
さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です