鎮静剤により低酸素脳症等が発症したとき、どのような場合に医療過誤とされるのか?

さいとうゆたか弁護士

執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

新潟県の弁護士齋藤裕に医療過誤はお任せ下さい。
新潟県の弁護士齋藤裕に医療過誤はお任せ下さい。

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

1 鎮静剤の医療事故

鎮静剤は取り扱い方を間違えると死亡や重度の後遺障害を招く危険性があります。

これまで裁判例でも、少なくからず、鎮静剤による医療事故について医療側の責任が認められてきました。

以下、紹介をします。

2 ミダゾラムによる低酸素脳症発症の事例

神戸地裁令和3年9月16日判決は、ミダゾラムを投与した結果、低酸素脳症を発症したという事例について、医師側の賠償責任を認めています。

同判決は、患者がミダゾラムの投与により呼吸抑制に陥りやすい状態となっており、すでにミダゾラム0・08mg/㎏に相当する混合溶液を投与されていたので呼吸抑制が生じていたので、さらにミダゾラムを投与するについては緩徐な方法によるべきであったのに(ミダゾラムの添付文書にそのような記載がありました)、急速な投与を行い、よって患者に低酸素状態をもたらしたとして、医師側の義務違反を認めました。

 

3  ホリゾンによる低酸素脳症発症の事例

広島高裁平成21年3月11日判決は、ホリゾンを投与した結果、低酸素脳症を発症したという事例について医師側の賠償責任を認めています。

同判決は、ホリゾンの添付文書には,「一般に成人には初回2mL(ジアゼパムとして10mg)を筋肉内又は静脈内にできるだけ緩徐に注射する。以後必要に応じて3~4時間ごとに注射する。」と記載されており,患者の症状等にもよるものの,通常,ホリゾンは10mgを数時間ごとに投与するものとされていたのに、医師において、投与後、約30分も経ない時点でホリゾン1A(10mg)を追加投与したことについて、ホリゾンの添付文書に記載された使用上の注意事項に従わなかったものといわざるを得ず,これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り,その過失が推定されるものというべきであるところ(最高裁平成8年1月23日第三小法廷判決・民集50巻1号1頁参照)、そのような合理的理由はなかったとして、医師の過失を認めました。

以上のように、鎮静剤については、誤った使用が人命に関わるものですので、医師には添付文書を厳守することが求められ、特段の事情なくそれを厳守しなかった場合、過失が認定される可能性が高いということになります。

4 鎮静剤を投与した後の監視義務

鎮静剤を投与した場合、呼吸抑制により重大な帰結となる可能性があります。

そのため、鎮静剤を投与した場合には、患者の容態を適切に監視すべきことになります。

東京地裁令和2年6月4日判決は、鎮静剤の投与自体は義務違反とはならないとしました。

しかし、医療機関が鎮静剤投与後の監視義務を怠ったとして、医療機関側の損害賠償責任を認めました。参照:鎮静剤投与後の監視義務違反を認めた裁判例

すなわち、同判決は、看護師による巡視等では限界があり、医療機器による監視に頼る必要があったので、医療機関には、ベッドサイドモニタのアラーム(酸素飽和度や無呼吸、呼吸数)がきちんと設定されているか、継続的にチェックする義務があったとしました。

それにも関わらず、チェックを怠り、5日間にわたりアラームがオフにされたままだったとして、当該事案において注意義務違反を認めました。

そして、当該注意義務違反と死亡の結果との間にも因果関係を認め、損害賠償を命じました。

このように、鎮静剤をめぐる医療過誤においては、患者に対する監視義務違反があるかどうかも検討することが重要です。

5 新潟で医療過誤のお悩みはご相談ください

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。
さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です