登山事故と損害賠償

さいとうゆたか弁護士

登山は楽しいレジャーですが、人命に関わる事故も多く生じています。

多くの場合には自己責任として賠償の問題は生じませんが、集団で登山をしたような場合等には賠償責任が生ずる場合もあります。

以下、ご説明します。

1 登山を不実施とする義務違反

宇都宮地裁令和5年6月28日判決は、高体連主催の平成28年度春山安全登山講習会において、平成29年3月27日雪崩が発生し、栃木県立高等学校の部活動の一環として参加していた生徒及び教師

が死亡した雪崩事故について、賠償責任が問われた事件における判決です。

判決は、「被告三講師及び被告高体連において、遅くとも27日の朝の時点で、那須町付近の気象情報や雪崩注意報等の発令の有無などを確認し、雪崩が発生する危険性を

想定して本件講習会を中止すべき義務があったにもかかわらず、これを怠って漫然と本件講習会を続行し、それによって本件事故が発生したと主張するところ、被告県及び被告高

体連は、被告三講師及び被告高体連の注意義務違反(違法性ないし過失)を争うことを明らかにしない。」、「よって、被告県は国賠法1条1項に基づき、被告高体連は民法7

09条に基づき、本件事故により本件被災者ら及び原告らに生じた損害について賠償責任を負う。」とします。

このように、集団登山の主催者サイドには、登山にあたり、天候について情報収集し、登山による危険が想定される場合には中止などを行う義務を負っており、それに違反し

た場合には賠償責任が生ずる可能性があります。

プロの登山ガイドである被告が主催した登山ツアーに参加した故A(以下「A」という。)が,同ツアー中に強風及び吹雪に曝されて低体温症により死亡したため(以下「本件事故」という。),Aの相続人である原告らが,被告に対し,安全配慮義務違反を理由とする債務不履行又は不法行為に基づき損害賠償の支払を求めた事案である。

登山ガイドの天候についての事前情報収集義務違反を認めた裁判例としては、熊本地裁平成24年7月20日判決があります。

2 ルート設定における義務違反

富山地裁平成18年4月26日判決は、文部科学省登山研修所が主催した冬山研修会において,北アルプス大日岳頂上付近で雪庇の崩落によって発生した雪崩事故により死亡した被害者の遺族が、国家賠償請求をした事案についての判決です。

同判決は、登高ルートが雪庇上にあることが予見できたとして、「見かけの稜線上から十数m程度の距離をとって登高ルート及び休憩場所の選定を行った講師らの判断には過失があり,見かけの稜線上から25m程度の距離をとって登高ルート及び休憩場所の選定を行えば,本件事故は回避できたので,過失と本件事故発生との間に相当因果関係が認められる。」として賠償責任を認めています。

集団登山の主催者サイドには、登山にあたり、危険個所についての情報を収集し、危険なルートを避けるべき義務があります。

3 新潟で登山事故のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください

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