
執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 株主代表訴訟を起こすことができる場合
会社の社長や役員らが会社に損害を及ぼした場合、株主が株主代表訴訟を起こすことができる場合があります。
株主代表訴訟については会社法第八百四十七条が定めています。
同条によると、6ケ月前から引き続き株式を有する株主は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、社長などの責任追及等の訴訟の提起を請求することができます。
株式会社が請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができます。
よって、社長や役員が株式会社に対し不法行為をするなどして、損害賠償債務を負っている場合、株主は上記の手順により株主代表訴訟を起こすことができます。
2 親会社の株主が子会社の役員について株主代表訴訟を提起できる場合
親会社の株主や子会社の役員について株主代表訴訟を提起することができる場合もあります。
大阪地裁令和6年1月26日判決は、子会社が技術基準を満たさないまま商品を出荷していたことについて、親会社の役員の賠償責任を求めた株主代表訴訟において、親会社株主の損害賠償責任を認めました。
同判決は、
ⅰ 親会社が、子会社に、親会社が製造等していた製品の事業を子会社に行わせていたこと、
ⅱ 親会社が子会社の事業方針等の指揮監督を行っていたこと
ⅲ 親会社の従業員を子会社の役員に選任し、本件出荷という具体的な業務執行の意思決定についても親会社の取締役によってされていたこと、
ⅳ 本件出荷に伴う損害賠償金も親会社が負担していること
などから、本件出荷に係る判断は、親会社の業務執行の一環として行われたものというべきであるとして、親会社の役員について損害賠償責任を認めました。
このように、一般的に親会社が子会社の業務を支配していたのみならず、問題となる具体的な行為について親会社が支配していたと認められる場合、子会社の行為についても親会社役員の責任を問うことができる可能性があります。
3 談合と株主代表訴訟
株主は、株式会社の取締役らが会社に損害を与えた場合、取締役らが株式会社に賠償をすることを求める株主代表訴訟を起こすことができることがあります。
株式会社において競争の実質的制限(談合)をして、それに責任を負うべき取締役らがいる場合、談合は独占禁止法3条に違反する違法行為であり、株主が株式会社にその取締役らに対する賠償請求をすることを求める株主代表訴訟をすることもありえます。参照:独占禁止法
東京地裁令和4年3月28日判決は、アスファルト合材の販売価格の談合について、役員や従業員らの賠償責任を認めています。
事業部長については、
ⅰ 従来、談合の会合に参加していたので、対象となる期間の談合についても知っていたと考えられる、
ⅱ 取締役として、談合の合意に従って製品事業部としての事業部方針を決定し、それに基づく社内通達発出を指示していた、
という状況において、事業部長において、株式会社が順守すべき独禁法3条(不当な取引制限の禁止)に違反する行為をしたものと評価されるものとして、賠償責任の対象となるとしました。
事業推進本部長については、
ⅰ 談合合意の存在、内容を知っていたこと、
ⅱ 製品事業部が談合の合意に従って合材の販売価格の引き上げ方針を決定し、その方針を株式会社としての指示内容とすることを妨げず、かえって、事業推進本部部長として上記方針を記載した通達の発出を承認した、
という状況において、株式会社が順守すべき独禁法3条(不当な取引制限の禁止)に違反する行為をしたものと評価されるものとして、賠償責任の対象となるとしました。
代表取締役については、
ⅰ 談合合意の存在、内容を知っていたこと、
ⅱ それにも関わらず、製品事業部が談合の合意に従って合材の販売価格の引き上げ方針を決定し、その方針を株式会社としての指示内容とすることを妨げなかった、
という状況において、株式会社が順守すべき独禁法3条(不当な取引制限の禁止)に違反する行為をしたものと評価されるものとして、賠償責任の対象となるとしました。
このように、談合を推進する作為をした場合はもちろん、談合を避止すべき立場にある代表取締役等については、談合を知りつつ、放置したことで賠償責任を負う可能性があることになります。
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