執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 他車運転危険補償特約について
自動車保険は、契約対象となった自動車に関する事故についてのみ補償されるのが原則です。
しかし、自動車保険の他車運転危険補償特約においては、契約対象となった自動車以外の自動車を運転中の事故についても補償がなされる可能性があります。
しかし、常に補償対象となるのではなく、被保険者等が所有し、あるいは常時使用する自動車を運転中の事故については補償がされません。
そのような自動車については、別途自動車保険をかけるべきだからです。
この常時使用と言えるどうかについては、これまで多くの裁判で争われてきました。
以下、その意味について説明をします。
2 他車運転特約における「常時使用」の要件について
東京高裁令和4年10月13日判決は、常時使用の要件について、「当該車両の使用期限、使用回数、使用目的、使用場所、使用についての裁量の程度等を総合的に考慮し、当該自動車の使用が、被保険自動車の使用について予想される範囲を逸脱したものと評価されるか否かにより判断すべ」として一般的な判断基準を述べます。
多くの裁判例も、上記基準をもとに常時使用性の有無を判断していると解されます。
東京高裁令和4年10月13日判決は、当該判決の事案については、事故を起こしたときの自動車は、借用していたものだが、返却時期に確定的な期限が設けられておらず、その間、運転者において特段の制約なく自由に利用することができ、現に継続的かつ日常的に使用していたとして、常時使用の要件を満たし、他車運転危険補償特約による補償はなされないとしました。
名古屋高裁平成15年5月15日判決は、1週間に4~5回その車を運転していたこと、近距離とは言えない使用もしていたこと、保険対象の車を運転者は使えなかったこと等の事情から他車運転危険補償特約による補償はなされないとしました。参照:他車運転危険補償特約の適用を否定した判決
他方、名古屋地裁平成19年9月21日判決は、
・運転者が,当該車両を,18日間に3回にわたって使用したものであり,その1回目の使用時間は約20分間,2回目の使用時間は約10分間,3回目の使用時間は約5分間に過ぎなかったこと
・試乗が目的の貸与であり、試乗目的を達した時期において本件車両を返還すべきことや,試乗目的に沿う内容の運転を行うべきことが,関係者間で黙示に合意されていたものとみるべきであること
等の事情を踏まえ、常時使用の要件を満たさず、他車運転危険補償特約による補償がなされるとしているところです。
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