食道挿管による医療過誤と損害賠償

さいとうゆたか弁護士

1 食道挿管とは?

呼吸不全を改善するために気管に挿管しようとしたところ、食道に挿管されてしまうことを言います。

当然、食道挿管をしても呼吸不全は改善しませんし、重篤な結果を招く可能性もあります。

食道挿管の医療過誤を巡っては、複数の司法判断がなされています。

以下、ご紹介します。

2 食道挿管について医師側の責任を認めた裁判例

東京高裁令和4年3月22日判決は、食道挿管により遷延性意識障害となった被害者について、「当該挿管が食道挿管となっている可能性を常に想定して念頭に置きながら本件患者の状態を継続的に観察し、各時点における本件患者の状態及びその変化に応じて、気管チューブの挿入状態の確認をするための措置を適時に講ずべき注意義務があった」としました。その上で、特に、患者がPEA(無脈性電気活動)となるまでに状態が急速に悪化したので、それまでに気管チューブの挿入状態を確認するために必要な措置を講ずるべきであったのに、講じなかったとして、注意義務違反を認めました。

しかし、上記注意義務違反と遷延性意識障害の因果関係が立証されていないとして、遷延性意識障害に至らなかった相当程度の可能性の侵害のみを認め、慰謝料300万円の支払いのみを命じました。

なお、高裁は、挿管自体については注意義務違反を認めませんでした。そのために注意義務違反と遷延性意識障害との因果関係が認められなかったわけです。

高裁は、気管挿管がされているかどうか確認する方法として、

①気管チューブの声門通過の直視下の観察、

②聴診による呼吸音等の確認、

③胸郭の動きの確認、

④呼気時に気管チューブが曇ることの確認、

⑤カプメーターの確認、

⑥SpO2の確認

があり、かつ、医師には、患者の状態や現場の人員設備、挿管当時の具体的な状況に応じて、正しく気管挿管がされているかを十分に確認すべき義務義務があったとしました。

その上で、当該事案では、医師において、②ないし④の方法での確認を行い、正しく気管挿管がなされていると判断したので、その時点での注意義務違反はなかったとしました。

当然、上記の方法を十分行わなかった場合には注意義務違反が認められることになります。

3 新潟で医療過誤のお悩みはご相談ください

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事をご参照ください。
さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です