1 非違行為と解雇
労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」としていま
す。
労働者に職務規律違反のような非違行為があった場合も、客観的に合理的な理由があり、社会的に相当な解雇でなければ、解雇は有効とはされません。
2 非違行為と解雇についての裁判例
大阪地裁令和4年12月26日判決は、教員が、
①平成29年4月から平成30年2月までの間、複数回にわたって遅刻をしたこと、
②教員会議での指示に反して他の教員の退職を特定の生徒に知らせたこと
を理由とする解雇について
①子どもや自身の体調不良といったやむを得ない理由のない遅刻をしたのは1回のみであり、その際も午前8時25分までには出勤しているから、授業の実施に支障を生じさせる態様のものではなかったこと、授業の実施に支障を生じさせる遅刻も12回あったが、これらはいずれも体調不良を理由とするものであった
②については、教員として求められる規律に反する行為であったといえるが、原告の行為によって当該生徒が退学したとの結果を生じたと認定することはできない
として、解雇無効としました。
ある程度悪質な行為があった場合でなければ非違行為があったというだけでは解雇は有効とはなりません。
東京高裁令和4年9月6日判決は、トラック運転手が、倉庫内にある積み荷を故意に崩して、叩きつけ、蹴飛ばすなど行為をしたという事例で、解雇を有効としました。
判決は、
・損害自体は比較的低額
・顧客から預かった商品を故意に損壊するものであり、それ自体顧客からの信用を失わせ、従業員にも悪影響を与えるものであった
・従来からトラック運転手が度々注意を受け、他の従業員に対する暴力行為や粗暴行為に及んで懲戒処分を受けていたこと
・従来の懲戒処分の際には、トラブルを起こした場合には厳しい処分となる可能性があるとの厳重注意を受けていたこと
との事情を踏まえ、解雇を有効としました。
ここでは、業務の本質的義務に故意に違反していること、従来から懲戒処分等がされてきたことが重視されていると言えます。
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