SNS上でのなりすましと法的責任

さいとうゆたか弁護士

1 SNS上のなりすましと法的責任

ツイッター、フェイスブック、インスタグラムなどのSNSについては、厳密に本人確認をするものではないため、なりすましが頻繁に行われています。
私が代理人として関わった事例では肖像権侵害として賠償が認められましたが、それ以外の法的構成を模索する動きもあります。

大阪地裁平成29年8月30日判決は、SNS上のなりすましについて名誉権、プライバシー権、肖像権、アイデンティティ権が侵害されたかどうかについて判断しています。
結論的には名誉権、肖像権侵害を認め、その他の権利の侵害を否定しています。

例えば、肖像権については以下のとおり判断をしています。

被告は,原告の顔写真を本件アカウントのプロフィール画像として使用し,原告の社会的評価を低下させるような投稿を行ったことが認められ,被告による原告の肖像の使用について,その目的に正当性を認めることはできない。そして,前記争いのない事実等(3)のとおり,被告が,原告の社会的評価を低下させる投稿をするために原告の肖像を使用するとともに,「わたしの顔どうですか?w」(平成27年5月18日午前10時39分),「こんな顔でHさんを罵っていました。ごめんなさい」(同日午前10時54分)などと投稿したことは,原告を侮辱し,原告の肖像権に結びつけられた利益のうち名誉感情に関する利益を侵害したと認めるのが相当である。
そうすると,被告による原告の肖像の使用は,その目的や原告に生じた不利益等に照らし,社会生活上受忍すべき限度を超えて,原告の肖像権を違法に侵害したものと認められる。

このように、肖像を使用することの正当性がないこと、社会的評価を低下させる投稿のために肖像を使っていること、侮辱する表現とともに肖像を使っていることなどから違法な肖像権侵害を認め、慰謝料支払いを命じています。

同判決は、アイデンティティ権については、人格的同一性に関する利益も法的保護に値するとしています。そして、なりすましの意図・動機、なりすましの方法・態様、なりすましによる不利益の有無・程度などを考慮し、利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるかどうかにより不法行為が成立するかどうか判断すべきとしました。そして事案についてあてはめを行い、アイデンティティ権の違法な侵害を認めませんでした。

他方、大阪地裁令和2年9月18日判決は、「人は、その氏名を他人に冒用されない権利を有するところ、かかる権利は、不法行為上、強固なものとして保護される」とした上で、「原告は、他人に氏名を冒用されない権利を違法に侵害されたと言えるから、利用規約により本件サイトに投稿された記事につき一定の削除権限を有する被告に対し、人格権に基づき本件投稿記事の削除を請求できる」として、氏名を冒用されない権利に基づき、投稿記事の削除を命じました。

後者の判決の方が権利侵害ハードルが低い様に見えます。

肖像権は写真などが使われる場合なので、それとは別個アイデンティティ権や氏名を冒用されない権利を問題とする実益は大きいと思われます。しかし、いまだ成熟した権利ではなく、これから開拓が必要な領域といえるでしょう。

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