保育園児の誤嚥事故と損害賠償

1 誤嚥防止のための注意義務

報道によると、2月12日に大阪で保育園児が誤嚥により死亡するという事故があったようです。2月3日にも節分の豆をのどに詰まらせた保育園児が死亡するという事故があったとのことです。

この点、結果としてそのような事故が発生したからといって園側が法的責任を負うことはありませんが、注意義務を怠ったと言える場合については賠償責任も生じうるところです。

保育園における食事介助にあたっての注意義務については「平成27年度教育・保育施設等の事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン~施設・事業者向け~」の記載内容が参考になると思われます。

この中では、「窒息事故を防ぐための安全な食べさせ方」が年齢毎に紹介されています。

1・2歳時については、「食の自立とともに、窒息事故が起こりやすくなることを把握しておく。」、「保育者は、子どもの食べ方や様子が見えるようにそばにつき、できるだけ立ち上がらず、落ち着いて安全に食べられるよう見守る」という内容がチェックポイントとされています。

その上で、以下の項目などが配慮事項とされています。

・一口の適量を知らせていく。

・のどを潤しながら食事をする。

・口の中の食べ物がなくなったことを確認してから、次の食べ物を口に入れる。

・スプーンにのせつ量や口の奥まで入れすぎないように注意していく。

 

このような配慮がなされていたかどうかを含めて注意義務違反があったかどうかが判断されていくことになるでしょう。

 

2 誤嚥が発生したときの注意義務

上記ガイドラインでは、背部叩打法、肺蘇生法、人工呼吸をすべきことが記載されており、これらの対応が基本となるでしょう。

ところで、人工呼吸については異物を除去してから行うべきものとされています。

この点、東京地裁平成16年6月22日判決は、以下のとおり述べて、異物を除去しないまま行った人工呼吸について過失はないとしています。

「原告らは,吐物を誤嚥した亡Aに対し,C保育士が,異物を取り除くことなく医学上禁忌とされるマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を行い,亡Aの気道を閉塞させた旨主張する。」
「この点,一般的に,吐物による窒息時において,マウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を行うと,さらに吐物が詰まる可能性があることは,医学上指摘されているところであるが,前記認定事実1の(1)によれば,C保育士は,亡Aを抱え,その背中をさすったり,叩くなどして洗面器一杯分程度の吐物を吐かせている上,亡Aに対してマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を行う直前にも,亡Aを仰向けに寝かせ,あごを上向きにして,口を開いて中を調べ,こんにゃく様のもの一切れを見つけて指で掻き出し,他に異物が残っていないことを確認した上でマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を実施していること,吐物は液状のものであったことが認められ,これらの事実に,前記のとおり,亡Aが既に完全閉塞状態に陥っていたという事実を考え合わせれば,C保育士の人工呼吸によって亡Aの気道が閉塞されたとは認めがたく,他に,原告らの主張を裏付けに足る証拠はない。」
「のみならず,救命という目的を達成するために,一刻も早い措置が必要とされる救急救命措置においては,原因を解明することなく,症状に対応した救命措置を実施することが必要であるとも説明されていることは,前記認定事実1の(3)のとおりであるところ,本件において,本件事故の発生機序に照らすと,保育士らが,亡Aの容態の急変が,吐物による気道閉塞であることを疑うことができたとしても,それまで発熱はあるものの,元気であった亡Aが突然嘔吐し,ぐったりとしてしまったため,救急隊を,要請し,その到着を待っている間,亡Aの呼吸も脈も著しく弱くなっていったという突発的かつ危機的状況下において,亡Aの生命の危険を感じ,その救命を図る目的で,人工呼吸を行うことは,その必要性が認められるところである上,しかも,その方法としても,前記認定事実1の(1)のとおり,C保育士は,口の中の異物を取り除いた後,マウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を選択しているのであって,医学上は,気道内の異物を除去した上での人工呼吸が望ましかったものといえるとしても,気道内の異物を保育士らが器具などを用いて取り除くことは,法律上も,技術上も不可能であったし,亡Aの気道閉塞は,救急隊によっても吐物を取り切ることができず,本件病院における措置によって,ようやく口腔内に大量に残存した吐物を吸引することができたほど重篤なものであったのであることからしても,かかる大量の嘔吐やそれに伴う窒息に対し,医学上最適の方法で対応することを保育士らに期待するのは不可能であるから,かかる人工呼吸と窒息との間の因果関係も不明であることをも合わせ考慮すると,C保育士がマウス・トゥ・マウスによる人工呼吸を行ったことをもって,被告に過失を認めることはできない」

このように、保育士には医療上最善の方法での救命措置をすべき義務まではないとされているところです。

ですから、注意義務違反が認められるのは、背部叩打法などの措置を全くしなかったような場合など限定的な場合となる可能性があります。

3 保育園における事故でお悩みの方は、弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください。

 

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