脊柱管狭窄症と素因減額(交通事故)

交通事故

1 交通事故と素因減額

交通事故で被害者が傷害を負った場合であっても、もともとの素因が傷害の発生や拡大に寄与しているような場合、素因減額として損害賠償額が減額されることがあります。

その中でもよく見かけるのが脊柱管狭窄症が元々あった場合です。

 

2 脊柱管狭窄症で素因減額を認める裁判例

例えば、水戸地裁平成30年5月23日判決は、以下の事情のもとで、50パーセントの素因減額を認めました。

・後遺障害は,本件事故の態様に比して結果が重大である

・本件事故の前から脊柱管の高度かつ広範な狭窄等があった

 

他方、大阪地裁平成31年1月30日判決は、事故衝撃が相当程度強いものであったことを理由として、素因減額を10パーセントにとどけました。

このように、

・事故態様との関係で現実に生じた傷害が不釣り合いに重いものかどうか

・事故前にあった障害と事故で生じた障害は重なるものか

・事故前の障害は事故時において軽快していたかどうか

等の要素を考慮し、素因減額をするかどうか、するとしてどの程度減額するかが決定されることになります。

3 脊柱管狭窄症で素因減額を認めない裁判例

他方、脊柱管狭窄症は加齢に伴い出現するものであり、特異なものではないなどの理由で、素因減額を否定する裁判例も多くあります。

大阪地裁令和1年11月15日判決は、

・被害者が事故前に脊柱管狭窄症での治療を受けていたわけではないこと

・事故による後遺障害がないこと

などを理由に素因減額を認めませんでした。

素因減額を認めない判断の要素は、3で述べた要素に裏返しとなります。

4 脊柱管狭窄症による素因減額が認められる損害費目

なお、福岡地裁判決では、「被告は,治療費,通院交通費及び通院慰謝料についても素因減額がなされるべきであると主張するが,症状固定時期について前記のとおり本件事故と相当因果関係がある範囲内に限定して認めていることからすると,その期間が素因減額をしなければ公平を失するというほど長期間に過ぎるとはいえないのであるから,被告の主張は採用できない。」として、通院関連損害について素因減額を認めていません。

通院関連損害が事故の態様との関係でかなり高額となるような場合においては通院関連損害についても素因減額がなされることはありますが、素因減額は常にすべての損害項目について一律になされるものではありません。

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