マンションで迷惑行為をする人から出て行ってもらうために

さいとうゆたか弁護士

マンションに関わる法律である区分所有法は、マンションの住人が迷惑行為をした場合の対応について定めています。

以下、どのような方策があるのか、ご説明します。

1 迷惑行為の停止等請求

区分所有法57条は、1項で「区分所有者が第6条第1項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる」、2項で、「前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない」と規定しています。

区分所有法第6条1項は、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」としています。

上記のとおり、共同の利益に反する行為の停止等の請求をなすためには、「共同の利益に反する行為」の存在は不可欠です。

この「共同の利益に反する行為」としては、ⅰ 建物の不当棄損行為、ⅱ 不当使用行為、ⅲ プライバシーの侵害ないしニューサンス、ⅳ 不当外観変更があげられる。このうち、ニューサンスとしては、「その専有部分内で他人に迷惑を及ぼすような異常な騒音・振動・悪臭・有毒ガスなどを発散させる場合とか、他人に迷惑を及ぼすような家畜その他の動物を飼育する場合とか、あるいは自分の専有部分で他人に迷惑を及ぼすような営業(例えば24時間営業のスナック喫茶など)を開業するとかの場合」があげられます(法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」271頁以下)。

裁判例として、違法民泊の差止を認めた東京地裁平成31年2月26日判決があります。

同判決は、「区分所有法6条にいう「区分所有者の共同の利益に反する行為」と認められるかどうかは,当該行為の性質,必要性の程度,これによって他の区分所有者が被る不利益の態様,程度等の諸事情を比較考量して決するのが相当である。」として基準を述べます。

その上で、

・マンションでの民泊について必要な許可がされていないこと
・無許可営業は,旅館業を知事の許可にかからしめて,旅館業の業務の適正な運営を確保することにより,もって公衆衛生及び国民生活の向上に寄与することとした旅館業法の趣旨,目的を没却するものであり,本件民泊営業は,違法な行為である

・被告が本件建物で本件民泊営業を行っているために,本件マンションの他の住民が,エレベータや郵便受けの利用に支障を生じていること

・本件訪問者らはいずれも被告の立会いのないまま外側オートロックドア及び内側オートロックドアを開扉しているため,被告の本件民泊営業のために,本件マンションの防犯設備の一部が無力化されていること

から、「被告が本件建物で本件民泊営業を行うことは,他の区分所有者の共同の利益に反する行為であると認められるから,本件マンションの他の区分所有者の全員は,被告に対し,本件民泊営業をしないように求めることができる」との判断を示しています。

また、大阪地裁令和4年1月20日判決は、管理規約で住戸をグループホームとして使用することが禁止されていたところ、住戸をグループホームとして使用することにより、管理組合がマンションについて防火対象物点検義務を負うことになること(費用は1年あたり51万8400円)、グループホームに供されている住戸への自動火災報知設備の設置義務を負うことになることなどから、管理組合の経済的負担が増す可能性があるとして、グループホーム設置は共同の利益に反する行為に該当し、管理組合は住戸のグループホームとしての利用停止を求めることができるとしました。

2 使用禁止の請求

区分所有法58条は以下のとおり定めます。

(使用禁止の請求)

第五十八条 前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。

 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。

 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。

 前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。「第6条第1項に規定する行為」について

「第6条第1項に規定する行為」とは、「共同の利益に反する行為」のことです。

「共同生活上の障害が著し」いと言える例としては、「イ 一度ガス爆発事故を発生させ、再度そのおそれが強い場合、ロ 専有部分を売春行為、とばくの開帳など犯罪行為や著しい公序良俗違反の行為に使用している場合、ハ 騒音、悪臭を発するなど他の区分所有者に著しく迷惑を及ぼす営業行為を行い、再三の警告にもかかわらず、違反行為を停止しない場合、ニ 性格異常者が他の区分所有者に刃物をつきつける等、他人に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれのある行為をする場合、ホ 暴力団構成員が専有部分をその事務所として使用し、他の区分所有者に恐怖を与える等の顕著な振舞いがある場合、ヘ 駐車中の車のタイヤの空気を抜く等他の区分所有者の使用等に対して悪質な妨害行為を繰り返す場合」があげられています(法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」307頁以下)。

「前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」も要件です。

この点、「前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」が要件とされているため、「差止訴訟を提起したがその裁判に従わない場合にはじめて使用禁止の請求が問題とな」るとされています(法務省民事局参事官室編「新しいマンション法」306頁以下)。

「弁明する機会」については、横浜弁護士会編「マンション・団地の法律実務」298頁は、「弁明の機会を与えたと言えるためには、あらかじめ本条の要件該当事実(上記実体的要件)の概要を知らせる必要がある」としています。

3 競売の請求

区分所有法59条は競売について定めています。

 (区分所有権の競売の請求)

第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。

 

「他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」とされており、使用禁止請求でも対応できない場合に要件を満たすことになります。

その他の要件については使用禁止請求の項をご参照ください。

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