交通事故による頚椎捻挫・むち打ちについて(損害賠償額、どのような場合に認められるか等)

交通事故

執筆者 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)

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1 頸椎捻挫・むち打ちの症状等(交通事故)

交通事故の後遺障害でよく見られるのが頚椎捻挫・むち打ちと呼ばれるものです。

むち打ちと後遺障害等級

交通事故後、首や頭などが痛み、レントゲンなどの画像上所見があれば後遺障害等級12級などの認定がされますが、画像所見がない場合には14級の認定がされる場合があります。

むち打ちが後遺障害認定される要件

労災保険において、むち打ちは、「通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの」である場合に14級に該当するとされます。

そのため、自賠責でも、常時ではなく、たまに痛みが生ずるような場合には後遺障害は認定されにくいことになります。

また、「疼痛」とされているため、違和感程度では後遺障害認定はされにくいことになります。

ただし、蟻走感、感覚脱失等についても、その範囲が広い場合には労災において14級と認定されるとされており(一般財団法人労災サポートセンター「労災補償 障害認定必携」161頁)、交通事故においてもこのような症状が重視されると考えられます。

このあたりは診断書の記載にも気を付けたいところです。

事故の衝撃とむち打ちの発症

事故の衝撃の大きさとはあまり関係なく頚椎捻挫・むち打ちが長引くことがあるとの研究もあります。しかし、保険会社・自賠責も裁判所も長期間の頚椎捻挫・むち打ちの認定には消極的です。

他覚所見がなくとも、事故の衝撃が大きいものであったこと(自動車の損傷具合や速度などから判断されます)、痛みが当初からあり長期間一貫していること、継続的で強い痛みが残っていることなどの事情があれば14級の認定がされる可能性が高くなります。

2 頸椎捻挫・むち打ちの賠償額

頸椎捻挫・むち打ちと整骨院・接骨院での施術費

頸椎捻挫・むち打ちの患者が整骨院・接骨院で施術を受けることが多いです。

医師の指示で施術を受けた場合(滅多にあることではありませんが)、医師の容認のもと施術を受け効果があった場合等には、整骨院・接骨院での施術費等も損害賠償の対象となりえます。

保険会社がOKを出していたというだけだと、施術費が最終的には賠償対象として認められない可能性があることに注意が必要です。

頸椎捻挫・むち打ちの後遺障害慰謝料

他覚所見のない頸椎捻挫・むち打ちの後遺障害に伴う慰謝料は110万円(東京地裁令和6年8月30日判決等)、他覚所見のある場合は290万円が目安とされます。参照:12級頸椎捻挫の後遺障害慰謝料を290万円とした裁判例

頸椎捻挫・むち打ちの通院慰謝料

通院に伴う慰謝料について、他覚所見のある頸椎捻挫については通常の場合と同様の基準で算定されますが、他覚所見がない場合には通常の後遺障害とは異なる低い基準とされます。具体的には、通常の場合は通院1月の慰謝料は28万円程度ですが、他覚所見のない頸椎捻挫・むち打ちについては19万円とされます。また、通院が長期にわたる場合、実通院日数の3倍程度を目安とするともされています(以上、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準上巻 2020」(いわゆる赤本)192ページ)。

頸椎捻挫・むち打ちの休業損害

休業損害については他の傷病の場合と同様に、事故に起因して就労できなかった場合に、その期間について失われた収入について休業損害の賠償をなしうることになります。

完全に仕事ができなくなったわけではない場合には、〇割分の収入が失われたものとして休業損害の賠償がされることがありえます。参照:頸椎捻挫について部分的な休業損害の賠償を認めた裁判例

頸椎捻挫・むち打ちの逸失利益

他覚所見のない頸椎捻挫・むち打ちについては、逸失利益の労働能力失期間が5年程度に限定されることが多く、他覚所見のある場合でも10年に限定されることが多いです。その結果、逸失利益はかなり低く抑えられがちです。参照:12級の頸椎捻挫の労働能力喪失期間を10年とした判決

東京地裁令和6年8月30日判決は、駐車場における軽微な交通事故による頸椎捻挫について、1年のみ労働能力喪失を認めましたが、このような例は極めて稀です。

傷害自体が争われる限定的なケースでのみ5年未満の労働能力喪失期間が認められると考えるべきでしょう。

3 むち打ちの発生が争われるケース

頸椎捻挫・むち打ちが認定される基準

衝撃が小さいと思われるような交通事故については、そもそもむち打ちの発生自体が否定されることもあります。

民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(下巻・講演録編 2023)所収の「受傷の有無が争点となる事案について」(戸取謙治裁判官)では、受傷の有無が争いになったケースでは、

ⅰ 衝撃の程度(車両の損傷状況、事故態様、速度・角度、衝突箇所、衝突後の車両の動き、双方の車両の車種・重量、修理内容、姿勢等。ドアミラーにキズがついた程度の事故では否定されやすい)

ⅱ 症状の内容・経過、治療経過(事故直後の受診、主訴と事故態様の合致、一貫した主訴、自然な治療経過、既往症、過去の交通事故歴・保険金請求歴、事故後の生活状況や稼働状況等)

を考慮して、判断するとされています。

軽微な事故で頸椎捻挫・むち打ちの発症を認めた裁判例

大阪地裁令和6年6月28日判決は、駐車場での後退車同士の事故で、右リアタイヤ部に損傷痕を生じさせたという事案で、「人体におよそ損傷が生じ得ない程度の衝撃であったとはいえず、証拠上窺われる治療経過に特段の不自然性がないこと」という理由で頸椎捻挫等の発症を認めています。

軽微な事故でむち打ちの発症を否定した裁判例

他方、大阪地裁令和6年6月27日判決は、

ⅰ 四輪車である本訴原告車と二輪車である本訴被告二輪車が接触した事故であるところ、車、二輪車

 の双方に擦過痕が生じているものの凹損は生じておらず、かかる損傷状況からは、本件事故による衝

 撃が大きいものであったとはいえないこと

ⅱ 車のドライブレコーダー映像上も、本件事故の際に本訴原告車の揺れなどの衝撃は見受けられず、

 被害者自身、本件事故の際に身体が揺れたかどうかわからない旨を述べていること

ⅲ 被害者は、本件事故から5日後である令和2年6月3日に整形外科を受診し、本件事故翌日から頸

 部痛が生じたと述べているが、本件事故から整形外科を受診するまでの間、被害者が頸部の痛みを抑

 えるために特段の処置をとっていないこと

ⅳ 整形外科の初診時に被害者の頸部に外傷所見、運動制限や支障動作等も見られず、被害者が述べる

 症状が外傷性のものであることを裏付ける他覚所見はないこと

ⅴ 整形外科では初診時に鎮痛剤等が処方されたものの、その後は検査や投薬等もなされないまま、頸

 部に対する消炎鎮痛等処置が行われているに過ぎないことからすれば、もっぱら被害者の自覚症状に 

 基づいた診療が行われていたにすぎないこと

から、頸椎捻挫の発症を否定しました。

どのような場合に頸椎捻挫の発症を認定すべきか

軽微な事故の場合に頸椎捻挫の発症が否定されることはありえますが、自動車に一定の損傷が生じた場合には、よほど治療経過が不自然ではない限り、頸椎捻挫の発症を否定すべきではないと考えます。

大阪地裁令和6年6月27日判決は、軽微な事故であったことだけではなく、初診が遅れたことが理由で頸椎捻挫の発症を否定したと考えられますが、やや認定が厳しいと言わざるを得ません。

4 頸椎捻挫と後遺症 12級と14級のむち打ちの違い

画像所見と12級、14級の違い

自賠責において、12級と14級のむち打ちの違いは、画像所見の有無であり、症状を裏付ける画像所見があれば12級となります。

しかし、話はそう単純ではなく、画像所見があるかどうかが争われることもあります。

例えば、画像上、椎間板ヘルニアがあったとしても、それは加齢による変化であるとして、自賠責が14級と認定することもあります。

この点、交通事故後の所見で椎間板ヘルニアがみられたのに14級と認定された頸椎捻挫事例において、名古屋地裁平成29年2月24日判決は、事故前には椎間板ヘルニアの治療歴がない等の事情を踏まえ、12級の認定をしました(ただし、10%の素因減額をしています)。

また、椎間板突出が画像上認められる場合でも、事故前からあったとして14級認定されることもあります。

この点、福岡地裁令和1年9月17日判決は、椎間板突出が認められる神経根と症状の部位が対応していること等から、12級の認定をしています。

画像所見があるのに事故と無関係等と言われ、14級認定された場合でも、12級に該当する可能性がないか、慎重に検討する必要があります。

神経学的検査方法と12級、14級の区別

裁判所においては、画像所見を重視しますが、さらに神経学的検査方法も重視します。

東京地裁令和3年3月29日判決は、以下のとおり述べ、スパーリングテスト及びジャクソンテスト以外の神経学的検査の裏付けがないとして、他覚的所見がないとしました。

「本件事故によって頚椎捻挫,腰椎打撲等の受傷をしたものであるが,骨折その他の外傷性所見はなく,B外科では,スパーリングテスト及びジャクソンテスト陽性以外の神経学的所見はなく,C外科における平成30年12月7日付け後遺障害診断書において,知覚,反射,筋力の異常所見はないことからすれば,他覚的に証明可能な神経症状が被告に残存したとは認められない。」

このように、裁判所では、画像のみならず、神経学的検査を重視しますが、患者の反応を記録するスパーリングテストやジャクソンテストは重視されず、病的反射などを調べる神経学的検査の結果が重視されることになります。

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