
報道によると、任天堂が紹介予定派遣の派遣労働者の直接雇用を拒否したということで、直接雇用を拒否された保健師2名が任天堂を訴える予定だとされています。
労働者派遣法は、紹介予定派遣について、「労働者派遣のうち、第五条第一項の許可を受けた者(以下「派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(第三章第四節を除き、以下「派遣先」という。)について、職業安定法その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。」として定義しています。
紹介予定派遣は、労働者に直接雇用労働者になるチャンスが与えられているものであり、労働者の資質を見極めたい派遣先だけではなく労働者にもメリットをもたらしうるものです。
しかし、派遣先は、当該派遣労働者を雇用する義務を負うものとはされていません。
そもそも、現行法上、使用者が労働者を採用するかどうかについては広い裁量が認められています。三菱樹脂事件に関する最高裁昭和48年12月12日判決は、思想信条を理由とする不採用も違法ではないとしているところです。
これは、日本の労働法制においては、解雇が厳しく制限され、一旦雇い入れた正規労働者を解雇することは容易ではないため、ほぼ一生の間雇用関係にある労働者の採否については使用者に広い裁量を認めるというバランスが背後にあると思われます。
よって、任天堂が派遣労働者を雇い入れなかったことも、原則としては違法とならないと思われます。
しかし、派遣労働者は、派遣先との間で事実上労働契約類似の関係を持ってきたものです。
そのような特殊な関係にある派遣労働者を、一般の採用希望者と同じに扱ってよいかも問題となりえます。
例えば、極めて不合理な理由で採用を拒否した、採用について期待を抱かせるような言動があった、障害者雇用促進法や男女雇用機会均等法等の差別禁止規定に違反している等の事情がある場合には、通常の場合より損害賠償を容易に認めるという解釈もありうるように思います。
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