電通が従業員を個人事業主化 法的な問題は?

労災、解雇問題

報道によると、電通が社員・従業員230人を個人事業主にするとのことです。

労働契約から10年間の業務委託契約に切り替えるということです。

個人事業主に切り替えることによって、

・兼業や起業が可能になる

・固定報酬の他インセンティブが支払われる

・電通内の複数部署の仕事をする他社と業務委託契約を締結できる

・競業他社との契約は禁止する

とのことです。

労働契約においては労働基準法等種々の法律の規制を受けることになります。

ですから業務委託契約に切り替えることで電通は法律上の種々の義務から免れることになり、大きなメリットがあります。

特に、過労死防止対策について企業にとってそれなりのコストとなりますが、そのコストを削減できるメリットは大きいかもしれません。

他方、労働者からすると、兼業や起業が可能になる、固定報酬の他インセンティブが支払われる、電通内の複数部署の仕事をする他社と業務委託契約を締結できるという点が、一見してメリットらしく見えるかもしれません。しかし、これらの諸点は、労働契約と矛盾するわけではなく、労働契約を維持しつつ導入することも可能です。それにも関わらず、業務委託に切り替わることで、簡単には解雇されない、業務上病気等になったら労災保険が支払われる等の労働者としての大きなメリットを失うわけですから、労働者にとっての実質的メリットはないとも思われます。

労働者としては、本当に業務委託への切り替えが自分にとって良いことなのか、慎重に検討する必要があるでしょう。

また、企業側が、労働者が業務委託に切り替える真意がないのに、強引に業務委託に切り替えた場合、上記した業務委託契約のデメリットを踏まえると、その効力(退職の効力)が問われうることになるでしょう。

さらに、業務委託契約の実態によっては、契約の切り替えをしても労働契約として扱われる場合もありえます。電通の業務委託契約では固定報酬が維持されますが、これは労働契約と親和性のあるものです。その他に実態において会社から「個人事業主」に対し指示がなされている、「個人事業主」がそれを拒否できない等の事情があると、「個人事業主」というのは形ばかりであり、実態は労働契約とみなされ、契約の解除(解雇)等が制限される可能性もあります。

このように、今回の電通の個人事業主への切り替えには様々な問題があるように思えます。この動きが安易に他の会社に広がらないことを希望します。

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