夫・妻や子に1円も相続させたくないときどうする?(推定相続人廃除)

相続問題

1 原則として1円も相続させないことはできない

夫や妻、子どもに1円も相続させたくないと思っている方もいるでしょう。

その場合、まずは遺言書で、他の人にすべて相続させるとの方法が考えられます。

しかし、兄弟姉妹以外の相続人は、法定相続分の2分の1の遺留分を持ちます。

ですから、夫や妻、子どもに全く相続させないというのは、原則として、常に可能なわけではありません。

2 推定相続人廃除

そこで遺留分をなくす方法があるかですが、民法上、推定相続人の廃除という制度があり、これを使うことで、相続をさせたくない相手を相続人から除くことができます。相続人から除くと、遺留分もないことになります。

推定相続人の廃除は、被相続人が家裁に廃除を請求するか、遺言によって行うことができます。遺言の場合、遺言執行者が家裁に廃除を請求することになります。

廃除を求めることができるのは、「推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」です。

3 推定相続人廃除についての裁判例

それでは実際にはどのような場合に推定相続人廃除が認められてきたでしょうか。

以下、裁判例を見ていきます。

大阪高裁令和2年2月27日決定は、以下のとおり述べ、夫婦間においては、離婚原因が存在するような場合に廃除をなしうるとしています。

「推定相続人の廃除は,被相続人の意思によって遺留分を有する推定相続人の相続権を剥奪する制度であるから,廃除事由である被相続人に対する虐待や重大な侮辱,その他の著しい非行は,被相続人との人的信頼関係を破壊し,推定相続人の遺留分を否定することが正当であると評価できる程度に重大なものでなければならず,夫婦関係にある推定相続人の場合には,離婚原因である「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)と同程度の非行が必要であると解するべきである。」

離婚事由がある場合に推定相続人廃除ができるということになると、配偶者間では離婚した方が早いということにもなりそうです。

しかし、婚姻費用の関係等で離婚できない、被相続人の死期が迫っているが相手が離婚に応じてくれず離婚に時間がかかるというような場合、配偶者間における推定相続人廃除が意味を持ってくるでしょう。

大阪高裁令和1年8月21日決定は、以下のとおり、被相続人に対する継続的な暴行を行った推定相続人に対する廃除を認めました。

「Bの被相続人に対する一連の暴行は,民法892条所定の「虐待」または「著しい非行」に当たり,社会通念上,Bから相続権を剥奪することとなったとしても,やむを得ないものと言うべきである。したがって,Bを被相続人の推定相続人から廃除することが相当である。」

4 新潟で推定相続人廃除や相続のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にお任せください

まずはお電話(025-211-4854)か、メールでご連絡ください。

弁護士費用はこちらの記事

もご参照ください。

さいとうゆたか法律事務所トップはこちらです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です