歯が欠けた場合の逸失利益(交通事故と歯牙欠損)

交通事故

1 交通事故と歯牙欠損

交通事故で歯がかけた場合、以下のとおり後遺障害認定されます。

3歯以上に歯科補綴を加えたもの     14級

5歯以上に歯科補綴を加えたもの     13級

7歯以上に歯科補綴を加えたもの     12級

10歯以上に歯科補綴を加えたもの    11級

14歯以上に歯科補綴を加えたもの    10級

咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの    9級

咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの 6級

咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの 4級

咀嚼又は言語の機能を廃したもの      3級

咀嚼及び言語の機能を廃したもの      1級

ところが、逸失利益を請求する場合には、労働能力が喪失したことが要件となります。言語の機能に障害があるような場合、労働能力喪失があったと言いやすいでしょうが、そうではない場合、等級認定されたからといって、ただちに労働能力を喪失したとはいえない、つまり逸失利益が認められないということもありうるところです。

そこで、以下、歯牙欠損について、どのような場合に労働能力が喪失し、逸失利益が認められるのか、検討します。

2 歯牙欠損について逸失利益が認められる事例

歯牙欠損については、後遺障害等級が認定されても逸失利益が認められない事例が多いです。

神戸地裁平成30年3月29日判決は、7歯以上の歯科補綴を要する後遺障害が残った薬学部学生について、その点についての逸失利益を認めませんでした。

横浜地裁平成29年12月4日判決も、7歯に歯科補綴を要する後遺障害が残った被害者(木箱梱包に従事)について、その点についての逸失利益を認めませんでした。

しかし、横浜地裁平成24年1月26日判決は、併合10級(歯牙欠損と醜状障害)について、以下のとおり述べ、15パーセントの逸失利益を認めています。

「原告の歯牙障害は,インプラントを入れているとはいえ,10歯に補綴を施していることから,訪問リハビリの際などに歯を食いしばれないために負担がかかったり,工夫を要したりすること,歯牙障害により聞き取りにくい発音があることなど,作業療法士の業務にも影響を受けているといえる」

また、鹿児島地裁令和2年8月6日判決は、言語聴覚士になるため専門学校に通っていた被害者に交通事故により歯牙欠損により12級の後遺障害が残ったという事例で、「歯牙欠損の治療として人工歯に入れ替えたことにより,単語の正確な発音が困難となり,言語障害を抱えた者に対するリハビリ業務に支障が生じていることが認められる」として、逸失利益を認めています。

名古屋地裁平成28年7月27日判決は、後遺障害12級の歯牙欠損について、顔面部の醜状痕とあわせコミュニケーション能力に相当な支障が生じているとして、逸失利益を認めています。

このように、力を入れる必要のある仕事についている人について歯牙欠損により力を入れることができなくなったとか、人とコミュニケーションをとる必要の高い仕事についている人について発音が悪くなったという事情がある場合、低いながらも逸失利益が認められる可能性があります。しかし、労働能力喪失率はかなり低くなりがちです。

3 新潟で交通事故のお悩みは弁護士齋藤裕(新潟県弁護士会所属)にご相談ください

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