執筆 新潟県弁護士会 弁護士齋藤裕(2019年度新潟県弁護士会会長、2023年度日弁連副会長)
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1 高次脳機能障害認定と画像所見
高次脳機能障害認定の実務において画像所見が中心的な位置を占めます。
画像所見の中でも重視されるのはMRIやCTです。
PET等はあくまで補助的な位置づけを与えられるだけです。
岐阜平成23年8月4日判決は、CT画像で明らかな高次脳機能障害の所見がない場合において、PETにおいて所見があると主張されていたという事案について、PETの所見は重視できないとしています。参照:高次脳機能障害の診断においてPET所見は重視できないとした判決
しかし、裁判例の中には、画像所見としてはPET所見しかない場合でも高次脳機能障害の認定をしているものがあります。
以下、ご紹介します。
2 PET画像しか画像所見がない場合と高次脳機能障害
大阪高裁平成31年2月14日判決は、「フルマゼニルPET検査結果による頭部外傷後高次脳機能障害の診断は,確立した診断方法であるとは認められず」としてPET検査結果による高次脳機能障害の認定はできないとしています。
静岡地裁平成30年10月12日判決は、「原告は,FDG-PET及びFA-SPM imageによって異常が裏付けられていると主張するが,高次脳機能障害の診断根拠としてこれらの画像に依拠することができるとの医学的知見が確立しているとは認められない」として、PET検査画像による高次脳機能障害認定を否定しています。
なお、名古屋地裁平成30年3月20日判決は、以下の状況において、PET検査の結果も踏まえ、高次脳機能障害の存在を認めています。
ⅰ 頭部外傷の受傷
原告は,本件事故により出血を伴う頭部挫創の傷害を負ったこと,自転車の運転中に本件事故に遭ったため身体に直接衝撃を受けたこと,被告車両の速度が時速30ないし35kmで,被告車両のフロントガラスには凹みとひびが生じたこと等に鑑みると,原告の頭部には相当な衝撃が加わったと推認され,外傷性高次脳機能障害の原因となり得る頭部の外傷を受傷したと認められる。
ⅱ 画像所見
本件事故後の平成16年7月14日にA病院で撮影された頭部CT画像上,原告の脳には小出血痕があったことが疑われるとともに,PETによれば酸素消費量は脳全般で低下していることが認められる。高次脳機能障害の判断におけるPETの位置付けについては,医学界でも評価が分かれているものの,酸素消費量の脳全般での低下は,高次脳機能障害の発症機序と矛盾するものではない。
ⅲ 意識障害の有無,程度
原告には事故直後の記憶がない。原告は,比較的短時間のうちに友人や原告の母に電話をかけるなどしており,その程度は大きくないものの,本件事故後,意識障害が生じていたことが認められる。
ⅳ 症状経過
本件事故後,原告には,暴力,暴言,コミュニケーション障害,家事や育児に困難を来すなど種々の情緒障害・行動障害がみられ,病識も欠如している。
ⅴ 神経心理学検査
原告の認知機能には問題がない。
このように、PET検査結果は、CT等の他の検査画像との合わせ技により高次脳機能障害を裏付ける証拠となりうるということになります。
現状のPET診断技術についての評価を踏まえると、PET画像だけで高次脳機能障害を認定させるのはハードルが高いようです。
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